のえる。 2019-02-10 20:33:27 |
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No.92様 蓮池君〉
(礼を言っている蓮池だが、此処の主は今や自分なのだ。前の住人にはとことん甘えきっていたと自覚はしているが__今はそうもいかない。自分が主になった以上、甘える訳にもいかない。そこまで親しくなっている訳でもなければ、先程会ったばかりの人間に甘えられる筈もなく。冷たい水でただひたすらにティーカップを磨きながら彼の例の言葉に応えることにして。)
「…別に…お礼なんて良いから。…今や僕が此処の主だから」
(前の主だってテキパキと働いていたし、前は分担もしていた。今回は慣れてきたら分担、なんてことも考えていたけれどそういえばまず仲良くなれるという確証はないんだった。忘れていた、と考えながら内心でそっと溜息を吐く。なんだか前と違ってうまくいくことが少なくなったような、そんな気がする。自分の気の所為だろうか?病は気から、というが此の気持ちもそうなのだろうか。不安な気持ちばかり抱えていても意味がないのは分かっているけれど、それでもその気持ちを中々無くすことが出来ないのは僕の悪いところであろう。)
No.93様 佐野君〉
(引き続きティーカップを洗っていると、佐野が話し掛けてくる。彼の方に視線をゆるりと向け、また逸らすと手を黙って動かしながら彼に答えることにする。)
「…んー…得意って訳じゃ。…ただ、前の人に教えて貰った最低限のことならできる、って感じ」
(言葉を途切らせながらそう言い、手を止める。綺麗になっただろうか、勝手にそう思うことにして水道の水を止める。ポタリポタリと残りの水滴が落ちるのをボーッと見つめながらハッとし、前の住人から教わった通りにカップを拭いて、置いておく。此のカップはガラス製だ、きっとすぐに壊れてしまう。こういうものを扱う際は気をつけなさい、と叱られたことがあったっけ。彼等のことは未だによく覚えているから、きっとこれからこの先も忘れることは永遠にないんだろう。)
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