罪 2019-01-12 17:26:13 |
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>>榊
(彼の体温が背中越しに伝わる。いつも凛然と胸を張り、部下を慈愛と威厳で率いる彼だって一人の人間なのだ。その逞しい背中に隠れた顔は何を思って今まで耐えてきたのだろう。自分はその背中を支える存在でありたいと切に願う。右腕としてではなく、梔と言う一人の男として。長いようで短いたった30秒の熱は、離れた彼を追い掛けさせるには十分だった。ここで逃してはならない。そう囁いた自分の第六感を信じて扉に掛けられた彼の手の上に必死の思いで自分の手を重ねる。引かれただろうか、と一瞬不安がよぎるもここまで来ては後戻りはできない。するつもりもない。彼が部屋を出る前に間に合ったことに安堵しつつ彼の隣に並び「…こんな俺ですが、いつでも甘えてください。…いえ、甘えさせてください。」と言葉がつっかえながらもそう伝える。控えめに彼の手を自分の手で下から掬い上げると、その甲へ口付け「…梔としての、お願いです。」と告げ、そっと彼の手を降ろし、自ら扉を開いて彼へ道を譲って。
その後、着替え終えるが、ふと自分の武器がないことに気付きさっと顔を青くする。そんなまさか、いつから?自分の身につけていた暗器は全てテーブルの上にある。しかし短刀が、『酒盗』と『酔鯨』だけが見当たらないのだ。彼の話に出てきた内通者が一瞬頭を過るが、該当する人物は思い浮かばない。彼をこれ以上心配させる訳にもいかず、とりあえず自分のお抱えである、ごく身近な者にだけ捜索を願い、自分も書類を片付けつつ探そうと部屋を出て)
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