罪 2019-01-12 17:26:13 |
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>>梔
(彼の左手首に光る時計と紡がれる言葉に擽ったい気持ちになり、心は満たされるのにもっと彼の近くに、奥深くまで寄り添いたいと貪欲に思う自分がいて。人との関わりは友好的でありながら何処かで一線を引いていた。だが彼とは違う。違ってきている。だからつい弱音を零したのかもしれない。常の緩い雰囲気を纏い誤魔化そうとするもどうやら彼には通じなかったらしい。突然の、予想外の抱擁に驚いて彼の腕の中で小さく肩を揺らすも彼の人を気遣う優しい心と言葉に大人しく腕の中に収まり胸がいっぱいになりながら困ったように笑い「君は何も悪くないでしょ?謝る必要なんてないの。」と。休すむようにと続く言葉も大丈夫と笑って流そうとした。が、回された彼の腕に力がこもり次に紡がれた言葉を聞いた瞬間、取り繕おうとした言葉が喉奥に引っ込み、鼓動がトクリと跳ね上がる。“大丈夫”、“間違ってない”と彼の声が、言葉が耳から胸に染み渡り秘めていた不安を軽くしていく。それはどんな名高い特効薬よりも良く効いて心までを熱くし、込み上げてくる想いで喉が鳴りそうになるのを寸でのところで息を飲み込み堪えて。それからは突発的に身体が動く。ベッドから立ち上がる相手を目で追うまでもなく自分も椅子から立ち上がると着替えに手を伸ばそうとする彼を後ろから抱き締め腕の中に閉じ込めて。「そのまま、じっとしてて。」と小声で零すと彼の肩口に額を押し当てて動かなくなり。時間にして30秒、たっぷり彼と体温を分けったところでゆっくり身を離すも彼の右肩に手を置いたままで顔を俯かせ「ありがとう、元気出た。…君も病み上がりなんだから無理はしないで。」とやや恥じらいの含んだ静かな声色を彼の背に向けて零すとつい甘えるような行動をした恥ずかしさから相手の顔がまともに見られれずに逃げるように相手の横を通り過ぎ扉に手を掛けて。)
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