罪 2019-01-12 17:26:13 |
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>>榊
(自分に選んでくれた。自分がいないところでも、彼が自分を意識してくれる、という喜びが今己が掌の上に形を成している。これは、自分だけのものだ。「…嬉しいです。誠さんがそばにいてくれるようで…。これからも精進せねばなりませんね。」ぱち、と自分の左手首に早速収まったそれは軽やかな音を立てて光り、新しい玩具を与えられた子供のように笑む。冷たいはずの金属パーツが、暖かく感じた。しかしそれも甘いひととき。彼の口からの現状を聞くとできるだけ素早く通常運転へ切り替える。つもりだったが、内心浮かれていたのは事実。だから、きっと、彼のこぼす弱音と苦笑いに体が動いたのだろう。それを目にした途端、彼がひどく疲弊し、何処かへ消えてしまいそうなか弱さを感じ、思わず無理やり体を動かして彼を抱きしめていた。「…申し訳ありません。自分が不甲斐ないばかりに…!」彼は責任感が強いので、きっと今回の件でも多くのものを背負い、傷ついてしまったのだろう。今回は特に自分の無駄な行動が彼に心労を加えてしまった。浮かれていた心は消え去り、ただ後悔ばかり。「あとは自分が。榊さんも休んでください。…心労は、気付かずとも溜まるものです。自分は貴方に笑顔でいてほしい。」彼も毒を刺されての交戦後、更に立て続けにこの事件だ。きっと休んでいないのだろう。彼の端正な顔に疲れの色が差している。根本的な解決はまだ時間がかかるものの、少しでも体を休めてほしい。彼を失うかもしれない恐怖はもう感じたくない、言動には出さぬが少しだけ彼の身体に回した腕に力を込める。「大丈夫です。貴方は間違ってないのですから、部下もみんな分かってくれます。」そう言うと体を離して、ベッドから立ち上がり部下が用意してくれていた着替えに手をつけようと一度背を向けて。)
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