罪 2019-01-12 17:26:13 |
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>>榊
(自分の頭を撫でる彼の手は、ずしりと暖かく、この場に居てもいいと言葉無しに語ってくれる。暖かい碇の様な存在だ。そんな優しい掌が自分の髪の間を通り抜ける感覚に春の海を思い出す。彼は暖かく、大きく、優しくそこにいつもあり、途方も無い安心を生み出すのだ。時には冷たく、牙を剥く時もあるが、彼の聡明な双眸に荒々しい怒りが、彼の唇から漏れ出す吐息に冷酷な鋭さが滲む時、自分はそれをも嬉しく思う。そんな海が一瞬凪いだ。それが自分の言葉一つのせいだとわかるや否や、脊髄が歓喜に震え、血が沸き立つ様な熱を体内で感じ取る。体内で燻る火種は、彼の瞳に宿る光によって燃え上がる。心の奥底にしまってあった欲望を糧に、大きく燃え上がった炎は自分の手を熱く、咄嗟的に動かせるだけの力を持った。自分の顎を掬い上げた美しく整った指先を包み込んで此方側へ軽く引く。軽く体勢を崩した相手の肩を抱き、囁く様に「…本当は、貴方と共に居たいだけの口実です。貴方と共に時間を過ごしたい。他の誰よりも長く。」と小声でそう伝える。熱に浮かされ漏れ出た本心はもう戻すことはできない。彼に拒絶されたらどうしよう、とそんな不安よりも今回は彼がどんな反応をしてくれるかが気掛かり。どんな反応であろうと全て目にしたい、と彼の美しい横顔をじっ、と眺めて)
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