罪 2019-01-12 17:26:13 |
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>>榊
(揶揄い混じりの笑みを浮かべるイチを見ると、そのコロリとした大きな目が細められる様はまるで子供のようで加護欲を誘うが、自分はそこへこの場にいない彼の穏やかな海のような笑顔を重ねて見てしまう。「迷惑かけてすまない…ありがとう。」此方側に背中が向くと安心してマスクを外し、一口目の粥を緩く咀嚼する途中にイチの口から飛び出た質問に危うく息を詰まらせる。自覚はしている、彼へ対して抱える感情は、今や一部下が上司に抱くものではなくなっているのだと。彼は、皆に優しさを振りまき、皆もまたリーダーとしての彼と、榊誠としての彼を認め、欲している。あの微笑みを、あの暖かい掌を皆渇望し、自分は皆が望むそれを独り占めしたいと願う。だからこそ、そんな質問が飛んでくると自覚している後ろめたさから動作を止めてしまい。しばらく動きを止めて静かに何かを思案していたものの「…いや、何もないさ。ただ…俺は彼に…誠さんに、もっと近付きたい。」と簡単に呼吸に混じる二酸化炭素のように嘘を吐いて。信頼しているイチに対して嘘をつく罪悪感から後半部分は本音を告げるがこんな気持ちを誰かに話せるはずもなく、そのあとは黙々とお粥を咀嚼する作業に移り。
一方、男は中心街をぬけた榊の背中を小さくなって見えなくなるまで眺める。自分は凡人故に彼のテリトリーで迂闊なことはできないし、そんな度胸もない。しかし、口元には確かにニタリと粘着質な笑みを浮かべていた。一マフィアの御頭という高嶺の彼は手に届かないが、有名故に、何処に咲いているかということは分かり易く…つまりは手の伸ばし方次第、等と自分勝手で低俗な思い上がりを男に持たせてしまう。
アジトに戻った榊を出迎えた部下達は皆思い思いに挨拶をして行く。「おはようございます!」、「お疲れ様です。」等の言葉の中「榊さん、お手紙が届いてます!」と新人と思わしき男が彼にそこそこな厚さにまとめられた封筒やハガキを手渡しする。「いつもは梔さんがこういった手紙のチェックとかするんすけど、今日はいないので。」勿論新人もその手紙の類をチェックしているものの、中身までは見ておらず、危険物がないものをセレクトしただけである。なので、まさかその手紙の中に相手のストーカーから盗撮写真が送られて来ているとはつゆ知らず。)
(/返信遅くなってしまい申し訳ありません!)
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