罪 2019-01-12 17:26:13 |
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>>榊
(「いい子」か。目の前の救急班の部下をぼんやりと眺めながら胸中で彼の言葉をなぞる。あぁ、そう言えば彼の前で悪い子になったこともあったかな、と上の空で思い出す。どうやら自分が飲んだのは遅効性の毒物に近いものらしい、そんな大切な思い出を振り返る途中でも、じわじわと横隔膜のあたりから痛みや麻痺感がせり上がってくるような感覚が出て来るが、致命的なものではない。しかし、厄介なのは致命的でないにしてもじわりじわりとした僅かながらも確かな症状が呼吸器以外にも、目眩、頭痛、吐き気等と複数みられること。風邪の初期程度の軽い感覚だが、飲んだだかの種類や解毒剤が分からない以上、自分にできるのは解毒が先か死が先かを待つだけ。一応救急班の部下には体調の変化を伝えた直後に聞こえた爆発音と部下からの牽制。情けない、右腕を名乗るからにはいつ何時でも、最後の瞬間まで彼をサポートするのが自分の役目だろう。あわよくば、あの男らしくも美しく伸びる手が刀を握り、縦横無尽に振るう様を見られたのならばそれが人生の最後の瞬間になるのならそれもいいだろう。そんなことを考えて、申し訳なく思うが咄嗟に部下をベッドに拘束し外へ飛び出そうとするも、部下の片手とベッドの柱を拘束したところでふらついて床に膝をついてしまい。
「なぁ、親愛なる元部下くんも言ってやりな?『武器を降ろしてくれないと爆発しちゃいますよ?』ってなぁ!」一方牢屋前では調子付いた男が件の部下の肩に手を回しニヤニヤと下品な笑みを強くする。その肩を抱かれた部下は罪悪感や恐怖、不安からカタカタと小さく震えているが、家族を思う気持ちと比例するかのようにぎゅ、とスイッチを握りしめている。騒然とする中、件の部下と特別仲が良かった部下の一人が「どうしてこんなことを!お前はそんなことする奴じゃないだろ!先代や娘さんが見たら悲しむぞ!」と集団から一歩前に出て声を上げると「…っ!煩い!煩いですよ!爆発されたくなかったら足のつかない車と、金、人質を用意してください!…早く!」と家族のことを出されたせいか、ひどく取り乱した様子でそう要求して。)
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