罪 2019-01-12 17:26:13 |
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>>榊
(相手の顔に広がる苦笑いに、一瞬ぞく、と何があったのか、と不安から鳥肌立つも休めば、と続く言葉に安心して少しだけ息を吐き出し。「…すみません、榊さん…やはり自分も残って仕事をするべきでしたね…」しかし、彼が傷つき、不快な思いをしてしまったことには変わりない。字自分が駆けつけるまでに他にも何かあったのかも知れない、と最悪の想像に顔を青くしながら「……本当に、お体は大丈夫ですか?何かございましたら何なりと…!」とその手を握った直後、聞こえた仲間の声にほっと安心する。思ったより早くて助かった、などと考えがよぎるが、肩にかかる軽く、しかし暖かい感覚に少しだけ目を見開いて驚く。そして同時に彼の無言の優しさにあの月夜のことを思い出す。彼の優しさは彼自身に実によく似ている。いつも振り撒かれる暖かいものに隠れているものの、ふとした瞬間に顔を出し、打つ波のない静寂の中で揺らがず、それでいて、決して冷たさや強引さはない。それは一種の淑やかな美しさをも含む様で彼の繊細でほっそりとした指先に見惚れてしまうほどに。そのおかげか、僅かに重心のブレた肩に気付く。「…貴方がご無事でいてくださるなら、こんなもの怪我のうちにも入りません。休暇だって貴方の側に立ちたいです。」と、部下が慌ただしく動いて視線がないのをいいことに、彼の肩をそっと此方側へ引きながらさっきの言葉はちょっと図々しかっただろうか、なんて。「堅い肩ではありますが、一時的な枕くらいにはなり得ましょう。」彼の叡智が散りばめられた双眸と視線が絡めば、その瞳にまた笑みが戻って欲しい、と柄にも無くそんな冗談を。「……良い人がいたんですよ。偶然。」もご、と一度口ごもったのを、マスクの位置を直すようにして誤魔化し、そう彼のコロリと変わった可愛らしい表情へ告げる。何となく、商売人から彼の情報を買ったという事を告げるのが嫌だった。彼の事を自分が、自分だけが知っていたい、そんな高慢な事を思いついたのはいつくらいからだろうか?勿論口には出さず、代わりにゆるりと目元を緩めて。)
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