罪 2019-01-12 17:26:13 |
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>>榊
(相手の微笑みに隠れる前の素の表情に触れられる時がたまにある。今回もそうだが、不機嫌そうな表情を見るのは珍しくついぐ、と見入ってしまう。形のいい眉が寄せられ、拗ねたような表情に一瞬、嫌悪される恐ろしさを感じ身を強張らせるが、その後に続いた微笑みに少しだけ安心して資料へ視線を落とす。「…えっ」バサバサッ、と音を立てて書類を落としたのは背筋に感じた感覚より、その後の彼の言葉に対しての驚きである。彼は今何と言っただろう、自分がしても良いのだろうか?彼の唇に?まさか、先ほど彼が不機嫌そうな顔をしたのは…?自分の都合の良いようにグルグルと欲が脳味噌の中を駆け巡ってゆく。更に視界に映るのはこちらを見つめる彼。下賤な役の熱に浮かされた頭では否が応でも先ほどまで熱を共有した唇に視線が落ちる。その柔らかな皮膚からこぼれ落ちる熱のこもった言葉を視認できるならば、とろりと垂れる蜂蜜の様だと頭の片隅で思う。砂糖とはまた違う甘美で、すり抜けていってしまう澄んだそれ。ごくりと唾を飲み込んだ時に想像したのはその甘さか、熱か。「…いいんですね?」ぐっ、と距離を詰め、逃さぬ様に素早く相手の後頭部と腰に手を回す。キスというよりも噛み付くかのように口を薄く開くと彼のしっとりと熟れた唇を喰らう直前に一言だけそう問う。我慢するのはこんなに難しいものだったか?否、彼だからこそ、彼の行動や言葉が角度を変えるごとに柔らかくも鮮烈な煌めきを放ち、徐々に自分の理性の糸を解いていくのだろうと自問自答を終える頃には、するりと彼は腕の外。したり顔で笑む彼にしまった、と思う。どこかの歌手が歌っていた美しいものは遠くにあるから綺麗、それが分かったかもしれない。彼の新たな面を目にする度、その面に魅力され、更にもっと、と欲深く強請ってしまう。「…では、資料一頁の第一項目から報告します。今回…」そんな欲を冷静な面に無理矢理押し込んで報告を始める。しばらくして全ての報告を終えると一息吐いて資料から彼へ視線を移し、ゆっくりとその体の前へ足を運ぶ。「…此処からは不真面目でもいいですか?」自分の身体と相手の身体が触れそうなほど近くまで距離を詰めると許可を伺うというよりもお願いに近い声色でそう言う。互いの衣服が衣擦れの微かな音を立てた途端、相手の答えを聞くより先に彼のふわりとした下唇に甘く噛み付き。)
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