罪 2019-01-12 17:26:13 |
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>>梔
(自室、風呂上がりに訪れるであろう彼の事を考え空調を湯冷めしない程度に少しだけ低く設定しておき、“報告”に来る相手に備えて資料に目を通し直す。しかし一度自我を解放してしまった己は存外欲深く、頭として受ける報告よりも、彼と交わした約束を、宣誓を期待してしまっていて。己としての気持ちを優先してしまうのはいつぶりだろかなんて考えていると控えめにされたノック音に不覚にもドキリと小さく鼓動を跳ねさせる。入室の許可を告げる前に立ち上がると自らドアの前に行きゆっくり彼と自分とを隔てる扉を開けば、其処に佇む待ち望んでいた姿。湯上がりの彼を近くで見るのはこれで二度目で、以前もその秀麗な姿に見惚れたがそこに思慕が加わるだけでより彼の姿を魅惑的にみせる。艷やかに水気を含んだ黒髪、露出の少ない私服の隙間から見える白い肌につい目を惹かれてしまいながら「入って…」と一言声をかけ彼を部屋に招き入れるとドアを閉めて彼に向き直る。そうすることでより強く香る彼の匂いは自分も使う物で嗅ぎ慣れているはずなのに、彼からするというだけで特別で芳醇な物に思え。「いい香りだね。…気に入ってくれた?」とまだ少し湿った彼の髪を掬いながら小さく笑むとその手で彼の目元をすぅとなぞり「顔…少し赤いね。のぼせちゃった?」と微かな色を含んだ笑みを零す。それも一瞬ですぐにいつもの微笑みに変えて「水、用意するね。」と彼から一度離れ部屋の隅に置かれる小ぶりの冷蔵庫から水を取りに行こうとして。)
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