罪 2019-01-12 17:26:13 |
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>>梔
(自尊心の塊のような男は相手の口車にまんまと乗せられ苛立ちで表情を歪ませる。銃口は変わらず部下に向けられていたが相手の鮮やかな苦無捌きに気付くのが遅れたのだろう、苦無は狙い通り部下に一切掠ることなく男の肩に命中した。グッと呻き声を上げ男の手から銃がこぼれ落ち、怯んだ隙に部下は相手に腕を引かれる形で危機を脱する。相手が繰り出した蹴りも男の腹に鮮烈に入り、その勢いで男は大きく後ろによろめく。が、そこは先代を殺った男、倒れることはなく苦無が刺さっているにも関わらずケタケタ笑い始め、負傷していない方の手で胸元からもう一挺銃を取り出し相手の顔スレスレに銃弾を打ち込んで「今のはわざとだ。折角可愛がってやろうと思ったのになぁ、残念だ。」とニタリと笑む。部下からは既に武器は取り上げてある。相手も今度こそ丸腰だろうと男は勝利を確信し銃の引き金に指をかけ───バンッと銃声が響く、血飛沫が飛び、そしてゴトリと銃が落ちる重厚音。どうやら間に合ったようだ。少々的は外してしまったが…、「ごめんごめん、銃に当てるつもりだったんだけど手に当たっちゃったね。」と悪気なくへらりと笑い慣れないピストルを片手にようやく相手の元へと駆けつける。状況は上々、先の悪条件からこの状態に持ち込めたのは流石。両手が使えなくなり呻く男の元へ相手を横切り近づくとその腹を蹴り飛ばし仰向けに倒して顳かみに銃口をあて「分かってないみたいだから言っておくけど俺が来なくても君はあの子に殺されてたから。…それとあの子を可愛がっていいのは俺だけ。」と冷笑を零し。彼の実力であれば男を瞬時殺すことも出来たはず、もしかしたら彼は始めから自分にこの男を殺させるつもりでいたのかもしれないと自惚れたことを思う。ともあれ、今は組織の彼の、己の仇を果たす時、男はここに来て命乞いをするがそれに靡くほど融和な心は持ち合わせていない。男が最期に「俺には妻子が───、」と口走るが冷たい表情のまま引き金を引いて。)
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