罪 2019-01-12 17:26:13 |
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>>梔
(自分が答えを出すよりも早く動いたのは相手だった。凛とした声、カランと彼の武器や暗器が地面に置かれる音がやけに大きく耳に響く。そしてすれ違い際に言われた言葉、彼の決意と確固たる覚悟、その中に込められた意味と想い、それが瞬時のうちに伝わる。相手を置いていけるわけがないだろう、と真っ先に浮かんだ答え。だがそんな自分の性格を彼は理解しているはず。傷つけたくない想いはお互い同じでそれを見越した上での行動。彼の凛然とした双眸は決して感情のまま動いているわけではなく、考えがあってのものだ。本来は頭の自分がすべき行動だった。それ彼に担わせてしまったのだ。そうして湧いた感情、それは嫉妬。彼の賢明な判断と揺るぎない精神への。まるで立場が逆転したようで気概ない己を責めるよりも前にこんな状況下で彼を羨んだ。それにだ、以前の戦いで‘我慢はさせない’と約束までしてしまっている。そうなれば自分は折れるしかなくて──、「…あとでね。」とたった一言、相手との再会を当然のように告げ、人質となる部下へも視線を向けその場を断腸の思いで去り。男は自分を深追いすることなく余裕の笑みで相手へと視線を向け、挑発にはピクリと眉を動かすも鼻で笑い「お綺麗な顔をして口は随分下衆だな。でもよ、お前のことは前に見た時から気に入ってたんだ。どうせ今のボスじゃ生ぬるくて辟易してんだろ?俺につくってんなら可愛がってやるよ。」と厭な笑みで相手を見て依然と銃を部下へ向けるが、相手が丸腰だと思い込んでいるのか隙は大きくなっていて。
一方で自分は残りの部下と合流し、内一人を消息不明の部下の捜索に当てて、相手の元へ応援が一人として行かぬよう残党を切り捨てる。中にはあのカラーギャングの主格も居たが用済みの男を生かす理由はなく迷いなく刃で喉元を切り裂き。数分もしないうちに動ける衆敵は居なくなる。となれば向かう場所は一つしかない。全てを背負わせてしまった彼の元。湧き上がる焦燥を抑え足を急がせて。)
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