罪 2019-01-12 17:26:13 |
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>>榊
(今までの仕事とは違う感覚。不思議と地に足がついたような感覚が今日はあった。それはきっと、いや、確実に彼が隣にいてくれたからだ。彼の背を見るだけで高鳴る心臓は落ち着くし、彼の隣に立つだけで自分は強くなれた気になる。不安に駆られることも、胸騒ぎもなくスムーズに進む状況に少し甘くなりすぎていたのだと危険に晒された部下を見て唇を噛む。恨んでも恨み足りない敵がすぐそこにいるのに何もできない歯痒さ…きっとそれは部下を大切に思う彼は自分の数倍感じているのだろうと何処か冷静にそう思う。相手と同じく咄嗟に出した双剣の柄はギリギリと拳の中で唸りを上げていたが、敵の視線が彼の背中で遮られた瞬間、あの月夜の背中と重なり、ふと頭に登った血が冷めていくのを感じる。自分が今やるべきは何か、彼を守るにはどうすべきか。恥も見栄も捨てろ、使えるものは使え、どうすればこの場面を切り抜けられるか、脳味噌を回せ。「分かった。」カラン、と短刀を地面に置き、次いで隠した暗器を床へ放り投げながら彼の脇をすり抜ける。その時に小声で「榊さん、近くに仲間もいるはずです。行ってください」と囁き敵と彼の間に立つ。恨めしい宿敵を前に、さらに部下を危険に晒した状況で、彼はきっと嫌がるだろう…しかし、ここで彼を失うわけにはいかない、そしてこれは自分の思いだが、彼に傷一つついて欲しくない。敵は今の所一人、片手しか使えない状況であるから脅威は銃弾のみ。この位置からだと後ろの彼に銃弾は当たらないし、捕まっている部下も今の所無傷で、戦闘スキルとしてはそこそこ場慣れしている者。このまま自分が近付き、此方に撃ってきた場合被弾するのは自分、すぐさま連射は出来ないので後は部下が対応してくれるはず。そして部下を打った場合は続射の前に自分が間合いを詰め、締め落とす算段だが、こちらは最悪の場合。最後に残っている最善の策は、今手元に残った最後の苦無が敵の銃を持つ腕を使えなくすること。それを実行するには銃口をこちらに向けさせようと態とらしく「…しっかしまぁ、カラーギャングやら人質やら…挙げ句の果てに武器を捨てろ?ゴミ連中相手に随分と臆病な事で。」等と挑発して)
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