罪 2019-01-12 17:26:13 |
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榊>>
はい。準備万端です。(夜の獣も姿を潜めるような暗闇の中、話し声ですら凍りつきそうな状況であれど不思議と暖かく、安心する光のような双眸が自分の目を射抜いていると気付けば、自然と緊張も解ける。昼の休憩のアドバイスや、この声がけだってきっと彼の優しい心遣いなのだろう。人を思い、見ているからできる小さくもありがたい配慮。現にそのおかげで目元のクマもずいぶんと薄くなり、目元には血の朱が通う程には回復して。しかし、一方で心臓には悪い。彼の眩い光は、自分には少し眩しすぎる。特にこんな暗い夜には今までの仕事の記憶が蘇り、彼の人間らしいその笑みに気後れしてしまう。勿論後悔や悲観に暮れる訳ではないが、やはりこんな気持ちになるのは決戦が近いからなのだろう。「…榊さん、」貴方に勝利を、と続けたいところで先程の彼と部下との会話を思い出し、言葉を詰まらせてしまう。自分は甘えさせてもらっているが、本当は自分も彼のように部下を安心させる側であるべきなのだ。それならば、今は、と部下と話す相手から少し離れ、自分も部下に声を掛け。最後に部下と武器の確認を終えると「それでは只今より潜入作戦を開始する。」小声でそう全体に伝え、山頂へ続く獣道に足をかける。木々が邪魔する視界の中、淡い光の中で相手の姿を目に捉えると日中に口にした宣誓を思い出す。これに籠める先代への弔意は勿論だが、この決戦には負けられない理由が増えたのだ。そう決意新たに登り始めた山道は、聡明な相手が編成したメンバーなだけあって道中何事もなく敵アジトの付近まで登り詰め、後は今立ち始めた霧が濃くなることを待つばかり、と息を潜め。)
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