罪 2019-01-12 17:26:13 |
通報 |
>>梔
(相手が去ってからも暫く唖然とその場に立ち尽くす。今、彼は何をしたのか…頭では理解していても感情が追いつかない。揶揄いにしては行き過ぎていて、彼はこんな悪ふざけをするような人間ではないはずで。あの瞬間、布越しではあるが彼の唇が触れる寸前、何をされるか咄嗟に理解して、止めるなり突き放すなりできたはずだった。しかしあの瞬間迷いが生じ、その迷いは動作を鈍らせて結果彼を受け入れる形になった。──ああ、きっと間抜けな顔をしていただろうなぁと冷静になり始めた思考で、至近距離にあった相手の端正な顔立ちを思い出しては苦笑が漏れる。あんなスマートな振る舞いをされたら世の女性は腰砕けになるに違いないなんて考える余裕も出てくるものの、胸の鼓動は速くズシリと重たい。彼の薄く柔らかい形の良い唇に直接触れたら、さぞ甘美なことだろう…が、その時は来ないだろうし、それを知ることは許されないだろう。「…ずるい子。」と自分に対しても返ってくる言葉を一人夜闇に零しては、彼が掛けてくれた羽織りを脱いで腕にかけると部屋の中へ足を進め、何食わぬ顔で片付けに加わって。
翌朝、アジトの幹部室にてコーヒーを飲みつつ敵アジトへの潜入の戦略を考えており。昨夜の事が何度か頭をちらつくが今は切り替える時、なにせこの戦いは組の尊厳に関わる重大なもので、敵も計り知れぬ力を持っていることから一切の油断は許されないのだ。潜入するなら夜か、はたまた一人を変装させ内部に送り込みその間にもう一方が裏で動くか、アジトへ行くまでの道のりも気になる所だが、とにかく相手の意見も聞いてみるかと資料に目を通していて。)
トピック検索 |