罪 2019-01-12 17:26:13 |
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>>榊
(この緩やかに流れる時間が続けば良いのに、なんて柄にもないことを考えてしまう。自惚れや気の緩みは判断を鈍らせる…まして、愛しい人ができるということは、自分にとっても相手にとっても危険なことは身に染みてわかっている、つもりであった。しかし、今はどうだろうか?自分の欲深さを甘く見ていた。平静を装った外面の中で色欲、独占欲、承認欲…ドロドロとした気持ちが欲望の形を纏って相手にいつ襲いかかろうかと舌舐めずりをしている自分がいるのだ。彼はどう思うのだろうか、どう思っているのだろうか、きっと、友好的には思ってくれているのだろう。彼のそんな優しさにつけ込む自分を知ると、どう思うのだろう。そう悶々と自分の気持ちを持て余していた時に唇に感じた人の温もり。考え込んでいた為に下げていた視線を上げると、かち合った視線と近づく距離。と、次に聞こえてきたのは予想外の部下の声。続いて視界に入るであろう部下に見せまい、と慌てて口元を隠すも、眼前に広がるのは相手の背中。我が組の全てを背負い、守る背中。自分は、この人にどれだけ守ってもらったのだろうか。有難い、と素直に感じると共に、守ってもらえるという安心を実感する。マスクを付け直し、先に歩きはじめた相手に追いつくと浮かべられた微笑みに、この掛け替えのない時間は終わり、生死をかける場が再び始まるのだと感じ取ると、急に不安が押し寄せる。明日自分はいないかもしれない。それならば、今、後悔のないようにしたい。「御許し下さい」そう小さく呟いて追い抜きざまに彼の後頭部に手を沿わせマスク越しに唇を合わせる。一瞬の後に相手から離れ、欲を滲ませた目で彼の双眼を見やり「…榊さん、俺だって男です。」と。その後、踵を返すと部屋に戻って片付けに参加し。)
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