罪 2019-01-12 17:26:13 |
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榊>>
(今、自分は確かに彼の微笑みの下を見た。いや、これは多分彼が“見せてくれた”。いつもの余裕のある涼やかな目元や落ち着いた鋭さを放つ瞳が朧げに揺れる様を、微かにたじろぐ動揺を、己が目にした時の劣情たるや!しかし、それも一刻。再び浮かべられた微笑みに少し残念そうな、そして、どこか少し安心したようなあやふやな笑みを自分も返し「…お嫌いですか?」と小突かれた額に触れつつ口の端を上げて。はらりと彼の口から紐解かれた過去は、春が近づく夜風に沿って舞うかの如く。自分に対して話してくれたことが嬉しくてたまらず、自惚れてしまいそうになる。彼の声に彩られた言葉はすとんと胸に落ちてきて、寝る前に物語をねだる子供とはこんな気持ちなのだろうな、なんて考えると図らずも口元を柔らかく緩め。先代との話を聞いて、クスクスと小さく笑ってみたり、仕事に関係のない会話を存分に楽しんでいるようで。「ふ、ふ…貴方に褒めてもらえるとは…過去の自分に妬けますね」彼の微笑みではない笑いをその目にすると、自分も自然と楽しい気分になり、歯を見せて笑う。自分もそんな冗談を返すと、「…自分は、貴方を初めて見た時、正直怪しいと思ってました。素性がわからなかったから。…ただ、貴方もそれは同じなのに、その時から優しかった。それと同時にこんなに優しい人が、冷静に人を殺すための刀を振るうのかと驚きました。」ふと自分が相手に持った初対面時の印象は、と会話に気が緩んだのか、目元を和らげながら言葉にそう表し。)
…要するに、憧れるようになったんです。あの時から、今も。
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