罪 2019-01-12 17:26:13 |
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>>垂くん
そんな、別にいいよ。気にしないで。
(仕事ね…、と心の中で彼の言葉の意味をしっかり受け止めつつ、此方も笑顔で返すも運ばれてきた酒にとりあえず手をつける。自分は所謂ザルで、飲めと言われれば樽一つ開けられるくらいには酒に強い。しかしグラスを持って口を付ける前にすぐに匂いで飲み慣れない酒の類だと分かり、これは飲んだら自分でも酔うかもしれないと。ただこれを利用しない手はない。そのグラスを今日は飲む気がしないからとか適当に理由をつけて連れに受け渡すと忽ち酔い始めた男の体を支えてやり、「あーもう、こんな酔っちゃって。」と白々しく言えば「帰るよ。」と強制的男を立たせて精算を済ませるとさっさと店を出てお暇しようと。なにせここは居心地が悪い上に、自分だけではなく相手も上手く動けないはずだから。変な探り合いはもうやめて、話すなら外でという意図で決して相手から逃走を測る意味合いではない。そもそもこれだけで‘仕事に真剣な’相手をまけるとは思わない。ちらっと相手を見て緩く笑って見せれば一足先に店を出て。)
>>梔
…可愛いってね、この歳の男に使うもんじゃないでしょ。
(一瞬、ドキリとする。彼の少しひんやりした滑らかな手に頬を触れられたのはこれが初めてではないが、顔を覗き込まれたとき、その深い紫眼に絡め取られたように目が離さなくなり動揺で瞳が揺れてしまう。いつもなら瞳に映る月が綺麗だなとか浮ついたことを考える余裕もあったがそれも出来ず…。彼に対してのこれまでの言動に決して偽りはない。ただ、無意識に、いや意図的に壁を隔てていたのは確かで、今その壁の隙間を彼は掻い潜り、自分は侵入を許した。その瞬間、戦慄のような、しかしマイナスではない感情が鼓動を速くさせる。下手をしたら胸を押さえていたかもしれない。それほどまでの心動が襲うが、寸でのところで‘これはただの揶揄いだ’と我に返りいつもの微笑みを貼り付けると頬に触れる手をやんわり掴んで離させ、その手で少し強めに額を小突いてやって。まだざわめく胸の衝動も、彼の落ち着いた声色で紡がれる先代との話しを聞くうちに落ち着きを取り戻し始める。まるで静かに星が煌めく夜空を思わせる語りは清く、彼の想いが心に伝わってくるようで自然と口許小さく綻ばせ。そして酒が注がれ自分に話が振られれば「そうだなぁ…、」と話すことを、というより何から話すかを迷うように酒に視線を落とし。それからは極自然にスラムで過ごした日々のことや先代との出会いを懐かしむように語っていた。実は始め先代のことを疑っていて衝突もあったなど誰にも話していないようなことも。「───、でも初めて君の剣舞を見たときはこんなに綺麗に剣を振るえる子がいるんだって驚いたよ。綺麗な子はやっぱり怖いんだなって。」と冗談を混じえれば小さく肩を揺らして笑い。)
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