罪 2019-01-12 17:26:13 |
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>>榊
(ガラリ、と音を立てて世界が崩れる感覚を知った。こいつの背後にいるのは先代を亡き者にした奴らなのだと脳味噌は理解するが感情が追いつかない。ガワン、と強かに打った時のようだ。疑惑、後悔、憎悪、憤怒、焦燥…様々な感情が一気に湧き上がり、そして__手に取った刃物を下げる。たった一瞬、瞬きの時間よりも僅かな間に蔓延った殺気を感じてやっと冷静さを取り戻す。油断していた。いつもはあんなに優しく、穏やかで虫も殺せないような彼が、先刻は確かな殺気を纏っていた。野生の動物の捕食の欲を伴うそれとは違う、人間の負の感情からくる、対象を破滅に追い込むための確実な殺意、敵意。確かにこの人は今、自分たちのボスである目をしていた。しかし、続いて易々と拘束を解いた相手に唖然とする。落ち着いてきた頭は漸く血が上り始め、再び武器を構える。それの相手はどちらに対してであろうか?冷静な判断をし損ねた脳味噌では分からない。やっと高まった心臓を落ち着かせたのは自分の首元にマフラーが帰ってきてから、目元への接触と、戻ってきた暖かい言葉。彼の顔はどちらなのだろう、ギラついた目元が彼の手で緩むことを感じながら頭の隅で考えつつ、ゆっくりと武器を仕舞い「…申し訳ありません。」と彼へ武器を向けたことと怪我をさせたことへの謝罪を。「自分は何ともありません。それより、榊さんの怪我を…失礼。」今更ではあるが、無いよりはいいだろう、と装備していた質素な三角巾とガーゼで簡単に止血をする。何分、仕事以外のことに関して不器用な自分には手当てが苦手な分野であることは自覚しており。それでも何もしないという選択肢は無く、三角巾を巻くが、気まずさから相手の視線を避けようと目を伏せて)
…救護班の待機場所は外です。傷口から感染する可能性もありますので、ここは一度外へ出ましょう。
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