罪 2019-01-12 17:26:13 |
通報 |
>>榊
(暗い水路の中、ひっそりと息を潜め機会を待つ。水路には様々なものが流れてきているが、形を保てていない自転車や、辛うじて本の形を保つもの、その中にひとつ異彩を放つ赤椿が流れてきた時、地下水路の湿気とは違うじっとりとした嫌な予感が背筋を這い上がってくる。それと時を同じくして聞こえてきた爆発の合図。逸る心と冷静な体は外の爆破音に紛れて地下水路を爆破、突入した潜入部隊の部下と共に動き出す。自分の手塩にかけた部下達が素早く周りの敵を圧制していく中、己も地を蹴り短刀『酔鯨』『酒盗』の二振りを振るう。しかし脳裏には師が言った言葉が出てフラッシュバック、「怒りだけでない、恐怖も焦りも全てを力に変えよ」と。もし頭に何かあれば…と嫌な予想が赤い椿と脳裏に散らつけば否が応でも振るう短刀の鋭さが増す。相手の強さこそ身に染みて分かっているが、彼は仲間思いであることも同時によく分かっている。部下が傷つくくらいなら、自分が傷つくことを望むだろう。囮となれば尚更それは強まることが予想できる。それが恐怖と焦りを増加させる。早く、早くここを片付けなければ。豆腐のように柔く崩れる最後の敵の体、相手の予想通り、内部に入ってしまえば爆破物も重火器もロクに使えない。戦いというよりも処理を行う気分だった。錆のような血の匂いが立ち込め始めると自分たちとは別の足音が聞こえ、苦無を構えてそちらを向くとそこには顔色が優れない相手の姿。ザッ、と。一気に頭頂部から血の気が失せていくのが自分でも分かるが、それよりも先に相手に駆け寄り、支える為に手を差し出して「…榊様!」と鋭く一声を)
トピック検索 |