罪 2019-01-12 17:26:13 |
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>>榊
(部屋の近くまで来ると、ふわりと漂う香りにかすかな疑問を抱く。一応、と音をできる限り立てないよう移動して襖を開けるのは最早職業病の一種だろう。しかし、鋭敏な彼にはそれは通用せず、とん、とこちらの存在に気づいていたようで、目線が交わると自然と頭を下げて「ありがとうございました…おかげさまでさっぱりとした気分です。」とまずは謝辞を。そして、かち合った視線の中に、見えたのは、深淵のような深く、静かな悲しみ。それについて口を開こうとするも、視界は真っ白なタオルの中に飲まれ、優しく揺れる。その穏やかな優しさにホッ、と胸をなでおろすと「良かった…。…いえ、榊さんの人徳のおかげですよ。ありがとうございます。」とその場の雰囲気を穏やかにしようとへらりと笑みながら礼を述べ。軽く二度叩かれた布団は先程よりも美しく整ったように見える…否、人への気遣いと優しさに溢れた彼のことだ、また気を遣わせてしまったのだろうと簡単に推測できると困ったように眉を下げ。しかし、逆らうわけにもいかず、その整えられた布団の上に恐る恐る失礼します、と座ると相手に向き直り。す、とその優しさと強さ、そして少しな悲しみが混ざるその瞳を真直ぐに見つめつつ「榊さん、自分の看病や、もてなし…本当にありがとうございます。この御恩はこれまでより一層の成果に変えてみせましょう。…話は変わるのですが、俺は自分のことより、榊さん、貴方のことが心配なんです。差し出がましいようですが、自分に出来ることならなんだって致しましょう。…何か、お話ししてはくださいませんか…?」と申し出て)
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