情報屋 2018-12-09 19:31:53 |
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( この不可解な感情を引きずる事の無いよう会話を打ち切ったというのに、こんな時に限って言葉を続けてくる相手に苛立ちが募る。今何を言われた所で黒の絵の具が塗り重なるだけだと言葉を聞き流していると、相手が何かを言いかけると同時に漸く機体が目的の階へ辿り着いた。後はやるべき事をこなし、いつもの様に事件を終わらせればいい。そうすればこんなやり取りも忘れて、お互いいつも通りに戻るだけだ。そう頭の中で繰り返す最中、自身の耳に届いたのは思いもよらぬ誘いだった。驚いて顔を上げ、見開いた瞳に映ったのは憎らしいほど整ったいつもの笑みで、これだからこの男には敵わないのだ。口調こそ命令的だが彼は此方に選択権を委ねていて、その事が元より鈍っていた思考を完全に停止させてしまう。あれこれ考える時間など与えてはくれず、扉が二人を分かつ前に自然と身体が前に出た。)
紫藤、…俺の事、裏切らないって、約束して。………破ったら俺は、お前を、…殺すと思う。
( 扉の閉まる音を背負いながら、絞り出すように名前を呼んだ。今まで殆ど口にしなかったその音は彼なりの意思表明の一つで、遠回りをしないと素直な感情を伝えられないこの男の精一杯の近道だった。瞳の奥に迷いが揺れるのは、隣に居る事を選ぶのに酷く怯えているからでもある。一つ保険をかけるように続けた願いは一見脅迫じみていたが、縋るような声色からは切望の色が滲んでいた。冗談でも脅しでも無く、今自身が命を狙われているのと同じように、今までずっとそうして生きてきたのだ。自分にとっては当たり前の事のはずが、今は目前の男を殺す事が何処か恐ろしく感じるのは裏社会から一歩足を遠ざけた弊害なのかもしれない。これで怯むような男ではないと知っていて、それでも少しは相棒として隣に置くと言ったことを後悔すれば良いと思ったが、結局苦しくなったのは自分のように思える。つまりはそれ程までにこの男の隣に在る事を望んでいると言ったも同然なのだが、それに気付けるだけの余裕は無かった。)
( /ごめんなさい、大変お待たせしました…;;
紫藤さんがあまりにイケメンすぎて睿と共に背後まで動揺してしまって文章を纏めるのに時間を要してしまいました、、、(?))
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