情報屋 2018-12-09 19:31:53 |
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……もう、なんでこうなるかな、いつも。
( 満足気な笑みを最後に漸く店の扉が閉まるのを見届けると、力が抜けたようにカウンターに突っ伏し深い溜息を吐く。厄介な屁理屈を経て此方が渋々首を縦に振った時、その日一番美しく笑う姿が嫌いだった。またしてもまんまと口車に乗せられた事を重く後悔しながら、カウンター横に設置された普段の生活空間へ続く扉に手を掛ける。彼は此方に約束を取り付けた時当たり前の様に服装まで指定してきたが、いい加減厄介な注文にも慣れてきた所だ。部屋のクローゼットを開け、ずらりと並んだ服の中から比較的無難なデザインのものを見繕う。白いタートルネックに紺のジャケット、灰色のパンツに手早く着替えると、横に流した長い髪を高めの位置で一つに纏めた。ホテルの場所は此処からそれほど遠く無かったはずだが、早く出るに越したことは無い。最低限の荷物をクラッチバッグに詰めると店前に“closed”の看板を掲げ、近くの駐車場に止めた愛用の車へと乗り込んだ。 )
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