小説家 2018-11-29 01:25:00 |
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(相手からの言葉は重くのしかかった。今、ここで頭を下げ許しをこうことはいとも簡単だ。煙草を返し、気がすむまで部屋に籠らせておけばいい、自分の仕事も減るし万々歳ではないか。しかし、自分の信念の元相手に付き従い続けて来た。それを否定された所で曲がる訳にはいかない。相手の言葉を受け、一瞬頭が真っ白で気絶してしまった方が楽なのではないかとさえ。言葉を理解した所で、瞬きを1つするとふと、細く一筋の涙が頬を伝った。再び瞼を伏せ、呼吸を落ち着かせ立ち上がると小さな声で、はい、と呟く。踵を返し、足を一歩踏み出すとそこから迷いは無く、身1つで上京してきた自分には荷物など鞄1つで充分だった。玄関へ向かう際に台所へ立ち寄ると、昼ごはんとして用意していた筑前煮の鍋の横に、紙切れに、″明後日までは持つと思います。良かったら、食べて下さい。″と一言添えて貼り付けた。玄関に向かい、靴を履くと振り返る事は無く家を後にして、)
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