小説家 2018-11-29 01:25:00 |
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…ん、漸くひとつ肩の荷が降りた。話を書くのは好きだから良いけれど、幾つも重なると流石に骨が折れる。──締め切り近くはお前さんにもきつく当たってしまうからね…たまには息抜きをさせないと、逃げ出されたんじゃあ私が困る。
(部屋に篭ったまま自分の小説とだけ向き合い続ける時間は、夢中になっていたとしても疲労が溜まるもの。締め切りが近づけば近づくほど相手にも自分のピリついた空気は伝わる筈で、些細な事でも語気を強めたり苛立ちをぶつけたりすることもある。そんな状態にあっても自分を献身的に支え続けてくれる相手の存在は言わずもがな無くてはならないものになっていて。彼なりの労りと感謝の意味もあるのだろうか、逃げ出されないようにと敢えて冗談めいた表現をしつつ少し笑って。猪口に口を付けると、久し振りの香りと喉元がほんのりと温かくなる感覚、日頃飲まないだけにひと仕事を終えた実感が一層湧いてきて深く息を吐き出した。普段は相手の作る食事があればそれだけで十分だが、二人だけのちょっとした打ち上げだと思えばたまの豪勢な食事も良いものだ。旬の味覚がふんだんに使われていて、蕗の薹の天ぷらに箸を伸ばすと塩を付けて口へと運び。)
…蕗の薹も、今が一番良い時期だね。塩を少し付けて食べるのが一番良い、香りも楽しめる。
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