隊長 2018-10-24 21:35:56 |
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(全て見透かすような物言いから最後には煽りまじりに諭されてしまっては、もうこの駆け引きの負けを認めるしかない。屈辱よりも自分の行いにどこか違和感を覚えながらも見てみぬふりをしてきたことを自覚させられその愚かさに憤って薄く下唇をかむ。結局のところ、相手の言うように自分は“少年(子供)”だった。幼い頃から抱いていた部隊の方針に対する疑問も考えないように仕向けられ、一度はした反抗も言い負かされ中途半端に終わって諦めたのだから、やはり自分は自分自身からも逃げて考えるのをやめ人に従うだけの楽な道を選んだだけなのだろう。それでも今更この道から外れようとはおもわない。たとえそれが相手の読みどおりでつまらないと笑われようと、自分のするべきことは決まっている。優々と食事を摂る相手がワインのグラスを開けるのを見届けてはようやく戻ってきた鋭い眼光で相手を捉えて。
何を言おうとお前のしてきたことがこの国で正当化されることはない。俺はお前を捕まえる。
(強い意志で告げる言葉がたとえ今は虚勢で意地に聞こえ、それこそ子供っぽいのだとしても、この犯罪者と自分の立場は変わらない。相手を捉える瞳に冷たさを纏わせるとゆっくりとした動作で胸の内ポケットに手を忍ばせる。そしてまるで拳銃でも取り出すかのように手を引き出しながら立ち上がってぐっと相手の前まで身を乗り出して。
…汚れてる
(ボソリと呟き内ポケットから取り出したのはハンカチ。そのハンカチで相手の手前にあるテーブルの点のようなクリームソースの汚れをさっと拭き取って。その動作の最中、念の為にと袖口に忍ばせておいた睡眠薬を1滴、空のグラスでも水滴と紛れて分からない量を滴下する。ある程度即効性があり万が一のため自分には耐性のあるもの。日頃からスリや窃盗を働く相手の目を欺くにはあまりにも不自然すぎる行動だが、潔癖の自分は恐らく一連の動作に裏がなくても気になって拭いていた。そのせいか突発的行動ながら自然にも見えなくもなく_。席に座り直すとハンカチを綺麗にたたみテーブルの端に置き、ボトルを持つと「もう一杯飲むか?」と。もし相手が飲まないと言っても良い。次の策を考えるだけ。その瞳は単純に二杯目を勧めているようにも酔って眠ってくれとそんな思惑を含ませてるようにみせて。
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