隊長 2018-10-24 21:35:56 |
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(相手の表情は先程から変わらないようにも見えたが『困る』と零す雰囲気はどこか穏やかにも見えて、またそのたった一言が少し擽ったくも感じた。慣れない感情に一口コーヒーを飲むことで気持ちを落ち着かせながら、小説の結末を聞いた相手の感想を黙って聞き止める。表情は平静でいたが心情はやや重たかった。相手の愛は本物だ。そして母親を“まだ”愛していると言う。まだ__。自分とこれから関わり続けても相手の母親に対する愛は変わらないだろう。だがもし…、もし自分と関わることで殺したことを悔いるときが来たとして、相手はその時どうなるのだろうと…、想像も出来ぬ不安があった。相手の考え方がどうであれ離れてやるつもりはないし、あの夜言ったことは守るが、酷く複雑な気持ちだった。まあ自分と関わって相手の考え方が変わるなんてのはいらぬ傲りかもしれないが。
まあ、たまには…。あまり口下手すぎるとまたお前のご指導を受けそうだしな。
(相手もこちらが話をはぐらかしたのに気付いているだろうに深くは聞いてこなかった。それに甘えさせてもらい軽口で返しながら、相手のどこか幼い笑顔を見てこんな顔が見られるならもっと本心を言葉にしてみるのもいいかもしれないなと思う。ただその笑顔がみたいからと言えないあたりやはり自分はまだまだなのだとは気付かない。そして何が食べたいかの問いかけには、作ってくれそうな返答に内心期待しながら考えるようにコーヒーに視線を落として。
和食かな。焼き魚とか煮物とか…。
(返答がアバウトで料理名が出ないのはそれだけ料理をしないことを物語っている。以前食したカルボナーラのような店に出されても可笑しくない一品も捨てがたかったが、なんとなく、無意識に家庭的な味を求めて言えば腕時計をチラりと見て「わるいな…。そろそろ時間だ。夕方は空いてるから…、お前の家でいいか?」と聞いておきながら残りのコーヒーを飲むと伝票を手に取り席を立ってしまうため半ば強制で。)
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