小説家 2018-10-24 19:26:17 |
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…成る程、うぐいす色、か。
(目を閉じたまま相手の言葉を聞き復唱する。相手が好きだと言ったその色は何処に色を付けるだろうかと考えつつ、そこで漸く目を開けた。そのひとつの色と相手の話した言葉から、墨が水に広がって行くように言葉が溢れ出していきそれを取り零さないように呟きながら筆を走らせて。)
……ほんの微かに香る三分咲きの梅の花、まだ少し冷たい風に乗って枝に止まる鶯、そのあどけなくも鮮やかな声が山間の村に春を運ぶ──…
(彼女の言葉は時折、止まっていた世界を色付けて話を広げる事が出来ると兼ねてから思っていた。ほんの些細なキーワードが自分の物語を進めるのだから、小説を愛してやまないと公言する相手は思いの外自分の小説と相性が良いのかもしれないと。筆を進めながら完全に夕餉の事は頭から離れ、その瞳は手元の原稿に注がれるばかりで)
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