執事長 2018-10-04 22:19:25 |
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>ジェイド
(彼の言い付けを破ってしまった。怒られるだろうか、それとも呆れられる?恐恐と体を小さく縮こめ、彼の反応を待っていると長い息が吐き出された。それだけで、ピクリと肩が揺れてしまう。叱責を覚悟し、強く目を瞑りその衝撃に耐えようと身構えたが、予想に反して告げられたのは自身を思い遣る優しい言葉たち。そう、比翼の鳥に憧れ、彼とそうなる事を願った。すり、と擦り寄るように彼の肩に頭を乗せ、促されるままに柔らかな感触の尻尾に触れる。「…僕は、君の片翼になれる?」情けなくも語尾が掠れてしまった。頭の中は様々な感情が交錯しごちゃまぜ。断片的によみがえった青い空が妙に網膜の裏に焼き付き、とても心許ない気持ちにさせる。言葉では何とでも言える。彼の本音が透けて見えたら良いのに。疲弊した心はいつになく後ろ暗く、鬱々としょうも無い事を考える。軈て廊下を抜け、辿り着いたのは彼の部屋。ゆっくりと下されたベッドの上、促されるままに瞳を開けた。あれ、と既視感が襲う。そう言えば初めて会った時、我儘を言って彼を困らせ一晩一緒に寝てもらった事がある。あれから一体どれ程の時が経過したのか。既に彼という存在は己の心の奥深くまで刻み込まれてしまった。そっと膝を抱えるように引き寄せ丸くなると、寄り添う彼の体躯に凭れかかり。「…どうして僕たちは別々の存在なんだろう。一つになれたら、こんなに不安になる事も、とても君に会いたいって思う事もなかったのに……」離れている距離がもどかしい。いっそのこと、一つに溶け合えたら良かったのに。願ってもどうしようもない事を思い、口に出してしまったのは、少しばかり心が疲れてしまったから。「ジェイド、僕をぎゅって強く抱き締めて」せめて今だけは近くにいるのだと、触れ合う体温で感じたい。小さく落とした言葉に切なる願いを込めて)
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