執事長 2018-10-04 22:19:25 |
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>ルシアン
(ぐぱあ、と上下に開かれた顎には整然と牙が並んでいる。血の混じった唾液が糸を引き、月明かりに照らされて悍ましさを助長した。貴方の小さな頭を一口で噛み砕いてしまうほど大きな口から、興奮した血腥い吐息が排出されて貴方の前髪を揺らす。闇の中へ落とされた一つの名前、それに呼応するように黒い影が閃いた。両断されたのは怪物の腕。貴方の首を掴んでいた手は手首から先が無くなっていて。甲高い悲鳴に似た鳴き声を上げる怪物、ひしゃげるような異音と共に再び廊下には静寂が訪れる。貴方を庇護するように眼前に立っていたのは、黒い尻尾と耳を持つジェイド。同族であろう怪物を殺害した凶器となったのは、あまりにも鋭い爪を備えた右手だったようで、怪物らしいどす黒い血液が爪の先端から滴っている。灰色の怪物が事切れていることを確認し、貴方の方へ向き直る。――目を瞑っていてくれて良かった。この凄惨な光景は、貴方の美しい心には必要のない思い出だから。黒い血に汚れていない方の手で、そっと貴方の目を覆い隠す。もう片方の手で、身体から分断されてもなお貴方の首を絞めつけていた怪物の腕をそっと取り払う。爪で貴方の首を傷つけてしまわないよう、慎重に。「もう大丈夫だ。怖かったな、ルシアン」依然と目隠しはしたまま、空いている手で貴方を抱き寄せて後頭部をゆっくりと撫でる。異常を察知し急いで駆け付けたからか、貴方を失っていたかもしれないという恐怖からか、或いはその両方か―少々息を荒げていて。「…一先ず、此処から離れよう。もう少し、目を瞑っていてくれよ」これ以上貴方に恐怖を与えないよう、努めてゆったりとした口調で声をかけつつ、貴方のお尻を自身の腕で持ち上げるようにして片手で貴方を抱え上げる。念のため、目隠しは外さないままにしておこう)
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