執事長 2018-10-04 22:19:25 |
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>レナード
……分かった。
(急かされる選択に今すぐには答えがハッキリと出せないようで、ただその要求に頷く。吸血鬼である彼からすれば、人間の自分など結局はバケモノの食事として連れて来られた存在なのだから待つ最後は死のみ、なのだろう。自らの顎に添えられた彼の手の感触は、体温など無く冷えきっている。それがより一層彼をバケモノと痛感させる。─何故、彼女を待つのか。ぶつけられた疑問に複雑な表情を浮かべてしまう。この異様な屋敷で目覚めた時すぐ側に居たのは、バケモノと括るにはどうにも優しさに溢れた、気品のある女性。当初は食事として連れられて来た事実が受け止めきれず、彼女にも冷たく接していたように記憶している。けれど、彼女は自分という存在をただの食事ではなく、一人の人間として認識してくれていた。吸血鬼で捕食者である事には確かに変わりないのかもしれないけれど、そんな接し方をしてくれた彼女は心の支えとして十二分だった。孤独である事が何より怖いのは本心ではあるものの、そういった経緯がある以上、その帰りを期待してしまっている自分が居たのも否定しようがない。「…マリーシュカは、とても優しくしてくれたの。私の話もちゃんと聞いてくれて、バケモノと言われてもピンとこないくらい穏やかで…。だからこそ、帰って来て欲しかった。例え食べられるのだとしても、あの人になら大丈夫かもしれないと思えたから。独りは嫌だけど、あの人が帰って来るって思うと耐えられたんだ」今はもう、耐えきれるか分からないところまできてしまったのだけど。と、敢えて口にはしないが内心では待つ事に耐えかねてきているようで。特に突っ込みのようなものは入れる事無く、淡々とコウモリへ命令するのを見ては、もしかしたらオレンジジュースと言われても子供だという感覚がそもそも無かったのかもしれない。なんとなく胸を撫で下ろしつつ、気付けば現れていたジュースにまたしても驚いたようで瞬きを数回して。差し出されたグラスを受け取り「…ありがと」小さく礼を述べてみるも、どうしても視線のいく透明度の高い赤い液体。色合いからして血というわけでもなさそうだが…なんて色々考え巡らせながらジュースを一口飲んで)
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