執事長 2018-10-04 22:19:25 |
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>ドロシー
ああ、ドロシー。…それって、すっごく素敵なことだわ(ドライな種族の怪物たる自分にとって、貴女が初めての特別であるのはある種当然の事。けれど、家族と言う共同体の中で育ち、同年代の人間が集う組織の中で生きてきたであろう貴女にとっても、己が初めてだと言われれば思わず胸を抑え、多幸感に目眩すら覚える。そんな貴重な初めての称号を、こんなバケモノに与えてもらっていいのだろうか。庭園への散歩、此方の誘いに乗ってくれた貴女に手を引かれるようにして立ち上がる。ふと時計へ目を遣れば、すっかり黄昏時。もう太陽は陰っている、このくらいの時間なら外に出ても問題はないだろう。「まあまあ、慌てないの。…歩くより、飛ぶ方が早いのよ、ドロシー。さあ、いらっしゃい」待ちきれないとばかりにはしゃぐ貴女の姿はとても可愛くて、思わずクスクスと笑ってしまう。貴女の手を握りながら、己が足を進めたのは部屋の扉とは逆方向、重たいカーテンの垂れた窓の方。空いている方の手を、虚空で何かを払い除けるように一閃すると、その動きに従って独りでにカーテンが開く。差し込む夕日に目が眩むが、目論見通り、この程度なら体調に支障はない。カチャ、と音を立てて窓が開く。ふんわりと貴女をお姫様抱っこすると、軽やかに窓枠へ飛び乗る。「羽みたいに軽いのね、貴女。…私を信じて、怖くないから」貴女を落とさないようしっかりと細腕で抱きかかえつつ、貴女の顔を見詰めて微笑む。言い終わると、ふわりと空中へジャンプ。本来ならこのまま重力に従って真っ逆さまに落下していくところだが、いつの間にかマリーシュカの背にはコウモリのような翼が生えていて。数m下へ落ちていったものの、すぐに落下の速度は急激に低下する。ふよりふより、まるで桜の花弁が舞い落ちるような軽やかさで。下方に広がるのは、様々な草木、色とりどりの花々が咲き誇る庭園。地上まであと20mほどの高さだろうか)
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