執事長 2018-10-04 22:19:25 |
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>ルシアン
ああ、俺に教えられることなら喜んで。(昨日今日で新しいことを沢山見聞きした筈なのに、貪欲に未知を求める貴方の好奇心は、己にはとても魅力的に映る。こうやって、貴方は全力で生きているのだ。そう実感すると、居たたまれなくなり貴方の髪を両手でぐしゃぐしゃに乱して。「そうだな…、特に大人になると素直になるのは難しくなる。心に棘が生えるんだよ。子供の頃は、つるつるしてすべすべして…、でもそんな剥き出しの心は容易に砕けてしまうんだ。だから、大人になるにつれて、自分の心を守るために何重にも棘が生える。棘は相手を傷つけるけど、その度自分も痛くなる。その痛みが怖くて素直になれないんだよ」いつもより饒舌に言葉を紡ぐのは、そんな“大人”を何人も見て来たからか、それとも自分もその“大人”に該当するからか。貴方が昨夜教えてくれた、“噛む方も噛まれる方も痛い”という言葉を思い出せば、長々と説明しなくてもお前なら分かっているか、と言わんばかりに、額を抑えた貴方を見詰めてふと微笑んで。「…有難う。本当に頼りになるなあ、ルシアン。お前も、棘が生えそうになったら、俺に言うんだぞ。その棘ごと、お前を受け入れるからな」きっと、煮え切らない己の心中にある違和感を貴方は見抜いているのだろう。優しい、本当に聡明な子だ。そんな風にしみじみと思いつつ、口角に浮かべた笑みを深めて。けれど貴方にばかり気遣わせるのは心苦しい、もし貴方が苦しむなら、それも分け合おうとお節介を。「ハハ、お前に尻尾があったら大変だぞ。3日ともたず千切れそうだ」貴方に己と同じ尻尾が生えた時のことを想像すると、笑いを堪えきれなくて。ブンブンと千切れんばかりに尻尾を振る貴方の姿は想像に難くない。華麗に鉛筆が線を描いていく様に見惚れていると、ふと響いた小さな異音に我に返る。済まなそうにする貴方、けどその様子はいつもとどこか違うように感じて。「いや、気にするな。俺は大丈夫だが…手、痛くないか?」ミスなんてとんでもない、と言わんばかりにゆるゆるかぶりを振りつつ、先程鉛筆を取り落とした貴方の手へ視線を注ぐ。長時間集中して動かしたから、筋肉が疲れてしまったのだろうか。ともかく立ち上がり、口笛で使い魔を呼べばお茶の用意をさせて。あっという間に淹れ立ての紅茶がテーブルに用意され、その横にはミルクや砂糖もたっぷりと置かれている。貴方の様子をちらちらと気にしつつ、「さあ、休憩しよう」と食卓へ誘って。差し出された小指、それにデジャヴを感じてくすりと笑う。そっと己の小指を絡めれば、「…指切った、」昨日貴方が歌っていた全貌までは記憶していなかったが、末尾だけを音程に乗せて、そっと小指を離して。「勿論お前が悪いことをしたら叱るが…、厳しく、ってのは難しいなあ」後頭部をぽりぽり掻きつつ、自信なさげにふにゃりと微笑む。貴方は非の付け所のない良い子で、厳しくするような要素がどこにもない。きっと自分に子供がいれば親馬鹿になるんだろうな、と思いつつ目を細めて)
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