執事長 2018-10-04 22:19:25 |
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>ルシアン
ハハ、…違うぞルシアン。相思相愛は、恋人達の言葉だ。俺達のは…意気投合、かな(覚束ないアクセントで告げられた四文字熟語に、思わず短い笑いが零れて。自信満々の貴方へ間違いを指摘できるのは、きっと出会ったばかりの瞬間よりも貴方との心の距離が縮まっているから。正解として提示した新たな熟語がぴったり正解かどうかは疑わしく、語尾は少々自信なさげに濁り、ぽりぽりと頬を掻いて。“―っと”、と軽く暖かい衝撃を受け止める。片手でぽんぽんと優しく貴方の背を撫でながら「…俺ともっと仲良くなりたいのか?俺はこわーい怪物なんだぞ、」じっと此方を見上げる貴方の瞳を、驚いたように丸くした瞳で見つめ返す。軽く脅すように、がるる、と小さな唸り声をあげて牙を剥いて見せるが、それすらカッコいいと言われてしまえば諦めるしかなく。「牙ならお前にもあるぞ。俺のよりは小さいが、魅力的なやつが」笑う貴方の口元から覗くのは尖った八重歯。自分の牙のように悍ましい刃物を連想させるようなそれではなく、貴方の持つ愛嬌を体現するようなそれはとても可愛らしくて。不意に紡がれた聞き慣れないリズムの短い歌に、目をぱちくりさせて「…今のは何だ?おまじないか?」まだ貴方の小指のぬくもりが残る自身の指をまじまじと眺めながら、投げた問いかけは至って真剣で。「明日、か。…少し用事があるんだが、それが終わってからでもいいなら大歓迎だ」明日――至極久しぶりに、“食事”を摂る予定がある日。決めたのはついさっき、貴方が美味しそうにご飯を食べる姿を見た時だ。人間を捕食する事に誰よりも抵抗を持つ己は、それこそ体調を崩してでも食事を拒み続けている。空腹を忘れよう、だなんて無茶なことだが、本能を御してしまえるほどの強い理性を持っていたことは幸か不幸か。ともかく、明日食べるつもりだったのは貴方ではない。人を喰らった口で、貴方と今まで通り会話が出来るかどうかは些か不安だが、貴方の我儘を出来る限り叶えてあげたいというお人好し精神が一枚上手だったようで。擽られて笑う貴方、この何気ないじゃれている時間にはどうしても心を和ませられる。ふと後ろへ軽い引力を感じれば、歩み出そうとしていた脚を止めて振り返る。「……俺は…。」貴方と一緒に食事なんて出来やしないのだ、と伝えかけて言葉が喉の奥で消失する。無論、貴方が食事をする場に立ち会うことも出来るが、お行儀を度外視して食事を心から味わう貴方の食べっぷりを見ているのは、どうしても食という本能を刺激されてしまう。「…一人で寝るのが嫌なら、ルシアンが眠るまで俺が傍に居てやるよ。勿論、毎日。…それでも嫌か?」貴方と視線を合わせるべく、しゃがみ込んでは貴方と向き合う。繋いだ手にきゅ、と力を込めつつ、自分にしてやれる精一杯の提案を。それでも不服だろうか、と貴方の顔を覗き込んで)
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