執事長 2018-10-04 22:19:25 |
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( 人外である彼の口から次々に紡がれる現実とやらは、どれも耳を疑うものばかりだ。感情論や私情を抜きにしても常人であれば易々とそれらを鵜呑みにすることは至難の業で、無論ギルバートのそのうちの一人だった。未知の生物に対する緊張感や恐怖心は薄まりつつあったものの正面を切ってお前は捕食される立場にあると言い放たれた暁には、疑念より先に強い警戒心が芽生えるのもまた当然。「ーー俺達人間が、餌?今まさに言葉を交わしているお前が、俺を喰うって言うのか。」種族の尊厳に関わる予想外の話題にピクリと眉を動かす。 種族の違いはあれど不気味なほど違和感を感じず難なくコミュニケーションが取れている彼と己。全て透明で手探りな状況下で唯一の救世主と呼べるかもしれなかった彼が、或いは彼らバケモノが、人間を食事の対象物として見ている。彼に嘘がないならもしかすると次の瞬間、自分は目の前の男に喰われてしまうかもしれないと言うのだろうか。そこまで考えたところで浮かび上がった一つの疑問符が脳内を制した。「……本当に喰えるのか。」踵を上げて背伸びをしズイ、と顔を間近に近付けて問いかける。初対面で不本意にも良心的な印象を受けた彼が、いくらバケモノと言えど簡単に人を喰らってしまうのかと。無意識に引き込まれる翡翠の桜桃眼を至近距離でじいと見つめながら、落ち着いた声色で試すような口調をしてみせ )
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