執事長 2018-10-04 22:19:25 |
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( 誠実な声色で述べられたお礼の言葉には何
も言わずに、彼の眼に視線をちらりと投げかけただけで。ギルバートがジェイドを気遣う理由も必要性も皆無だが、それは一方的でなくお互いに言えることだ。この場で無意味に遠慮し合うことはやめるべきだろう、と心の中で小さく呟く。顰めっ面のまま俯いていれば、踵を返して背を向けた彼が再び口を開く。今度はこちらが拳を握る番だった。ソファに腰掛けた彼の口から紡がれる一つ一つの言葉全てに耳を塞ぎたくなる。ただ考え付くだけでそうしないのは、夢か現かまだ寝惚けた頭から知恵を絞り出し不快かつ不利益な情報を遮断したところで、所詮一種の現実逃避にしかなり得ないと分かったからである。巡り巡る時間は無限だが、砂時計の砂が落ちきる一瞬、そして生き物がひとつの魂に記憶を蓄えていられる時間は無情にも有限なのだ。くだらない現実逃避に時間を費やすぐらいなら、有意義な人生を歩むためにも柔軟性を重視しまずは受け入れる度胸が必要だろう。「ーーまるでどこかの御伽噺みたいだ。馬鹿な話だ冗談はよせって、笑い飛ばしたくなる気持ちもお前は分かるだろ?……それで、俺がその御伽の国に招待された理由は?」目が覚めた瞬間から不可解な状況に少なからず不信感を抱いてはいたが、知らず知らずの間に気が付けば生まれ故郷とは別の世界に連れ去られていたなど。こんな突拍子のない話が事実であってたまるかと呆れ半分に溜息をつきたくなるのを堪え、しかし警戒心と共存する己の好奇心が疼く感覚も完全に無視することは出来ない。コツ、コツ、と艶やかな革靴を鳴らして数歩前に出れば、背を向けていた彼の前方に立って今度はこちらが見下ろす形で問いかけて )
(/お返事ありがとうございます!それでは昨夜に引き続きジェイド様にお相手をお願いいたします。)
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