ポップなデザイナー 2018-09-07 21:07:52 |
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あー、あいつらなァ。初対面の時からずっとだぜ、あれ。お互い何がそんなに気にくわねぇんだか知らねーけど、仲が良いんだか悪いんだか……。なあ、お前…もしかして何度も見に来てたのか?やたら詳しいけど。ふ、…ばーか。マスターに悪事を控えろって言う悪役がどこに居んだよ、俺があの方にそんな事言うわけ……いや、うん。絶対言えねー…。時と場合によっちゃ敢えてそうする事もあるが、基本的には優しく接しても馬鹿正直に居ても損する仕事なんでね、悪役にはどっちも褒め言葉だ。残念だったなぁ?
(彼に言われたのをきっかけに記憶を辿る。思えばあの二人は初めて顔を合わせた頃から既にあの関係だった。元は背丈の話から始まったはずだが今やそれだけに留まらず互いに何かと意識しては頻繁に言い合いを起こす。それも四年続けばすっかり定着してしまった様子で呆れ混じりに話す。ふと彼が名前までは覚えていないにしろ他リクルーターの特徴や関係性を正しく捉えて話している事に気付き、それを問い掛けてみた。どうやら先程の発言が気に入らなかったようで、不満を全面に表すようにぷくりと膨らます頬を見れば思わず気が緩んでしまう。人差し指を立てるジェスチャー、それが意味する事を正しく理解したうえで、軽々と否定を返した。我々にとっては悪事が本業なのだから控える理由もその気もない。そもそも自分はあの方に意見出来る立場に無いのだと、語尾につれ声音細々と震わせながら呟いた。職業柄、人に優しく真っ直ぐに生きても得をすることは少ない。彼の投げた言葉はそのどちらも痛くも痒くもない、むしろただの褒め言葉だと楽しそうに告げた。調子を崩した彼を揶揄いながら、こうして手を繋ぎ横を歩くこの空間に言い知れない心地良さを覚えていた。そうやって歩き進めれば次第に甲高い悲鳴が耳に入るようになり、その声の出処へと目を向ければ高く聳えるホテルの姿が見えて来た。)
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