橙 2018-08-11 15:32:12 |
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>30 / 神様
( この地域は自分の故郷である。反抗期では無かったものの遊び回っていた自分は都会に進出したがり、高校生から都会に住み始めた頃が懐かしい。今こそ都会の便利さを知ったものだから、田舎の不便利さは嫌でも分かる。然しながら高校生までの生活では都会の便利さを知らなかったもので、そう不便利には感じなかった。そんな生活の中で暇な時間を埋める為に母の話を聞いていたものだ。その数ある話の中でここの神社に纏わる怪談を聞いたことがあるのだ。肝試しに訪れた若者を喰らう大狐が祀られていると。だからあの神社には冷やかしで行くなと何度も何度も言われてきたが、この歳になって母の言うことを破ってしまった。どうやらあの話は本当だったらしい、母から聞いた話とは程遠い容姿だったが本当に自分を喰らうのだろうか。恐怖とは裏腹に好奇心も湧いてきた果てに、常識的には逃げるべきところなのだろうが次第に相手との距離を狭めて行き。すると霧も段々と晴れていき、相手の容姿がくっきりと浮かんでくる。七つの尾に美しい白髪、色素の薄い水色の着物を着流している。そこに居たのは言い伝えとは真反対の_美しい狐だった。然しそんな相手から吐き出されたのは少しばかり棘のある言葉。意外なギャップに再び恐ることなく寧ろ好奇心で身震いする程だった。 )
罰当たりなんてとんでもねェ、神社なんて人が来なけりゃ廃れてく運命さ。そんな所に肝試しで繁盛してお賽銭までいれてくれるなんて有難いじゃねェかィ?そんなの解ってるさ、神社だろう?それよりお前の事、教えてくれよ。
( 僻むこと無くへらっと笑えば更に相手との距離を狭め、首を傾げる。本人にとっては小馬鹿にしていないつもりなのだが、そういった声色になってしまうのはいつもの事。自分からしたら慰めている、或いはアドバイスをしているつもりなのだが今回もそんな声色で相手に問いかけた。だがそんな事はどうでもいい、相手の正体はなんなのか。何処に住んでいるのか。名前はなんなのか。相手の事をもっと知りたかったらしく、右手は己の腰へ、左手は相手の肩へと持っていき優しく笑って。 )
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