ストーリーテラー 2018-08-02 22:59:06 |
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>レナード
ねえ、冗談なら辞めてよ笑えない…から
(頭がおかしくなりそうだ。あの日のコトと今目の前にある糸車が現実を巻き込んでグラグラと思考を焼き切るような感覚すら覚える。早く逃げないと、此処から、でないとあの暗い世界にまた…聞こえた声は自分のものではなかった。揺れた目の前の人間は自分ではない、握られたままの手にはもう熱なんて残っていなくて情けない程に指先が震えている。それは、眠り姫にしてみれば突然の悪夢の再来。呼ばれた名前に目を見開いて、その瞳に動揺よりも濃く絶望を映し出せば身体が硬直した。どうしよう、どうしよう_逃げないと)
…駄目、レナードは違う。連れて行っちゃ駄目なの
(冷静に考えれば分かる話だ。だって、この人は[眠り姫の王子様じゃない]。けれど、震える身体は冷静な思考を欠いたまま貴方の手に縋りついて進む足を引き止めようとして…それでも身体が少しずつ糸車へと近付く度に悲鳴が喉の奥で消える。自分のせいだ、行くって言った自分のせい…恐怖で感覚が麻痺したのか両目から涙が止まらない。長いこと眠っていた自分には大きすぎる感情の起伏に耐えきれなくて、呼吸が下手になる…離れない手に縋り着けば涙が手に落ちていく。全て彼の手のひらの上なのに、眠り姫は思うのだ…嗚呼、何の罪もない王子様を危険に晒して、私はどう償えば良いんだろう。強く噛み締めた唇に血の赤が滲んで鉄の味がした)
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