とある公安所属の女 2018-07-20 22:31:27 |
通報 |
そろりそろりと、席へ帰還し、薄らと目を細めつつ彼の様子を見守る。自分にはこんなことしか出来ない。優しく言葉をかけたり、励ましたりそんな可愛いことではなくあくまでも部下としての体調面の管理しかできないのだ。彼が栄養ドリンクの瓶を置いたのを確認し、ほっと一息ついた
「…ま、風見くん、…仕事終わらなかったら手伝うから頑張ろ」
顔色が一気に悪くなった彼の背中を1発叩き、脳内をリセットすれば再び画面へと向き合った。自分に今、出来ることをただ黙々とこなしていく。ただ、それだけだ。日本のため、なんて建前ではなく自分の健康の為に。睡眠の為に
その日は、ちょっとした大仕事を抱えていた。仕事を終えた頃には辺りが闇に染まっていた。兄貴、今日はどうしやすか、とハンドルを握っているウォッカに訊ねられれば、こいつの手入れだけ頼んでくる、と短く告げた。いつも通りの場所で降ろさせれば、コツンコツン、と硬い無機質な音を響かせ、廊下を進んでいく。ドアノブへ手を伸ばした時、不意にかけられた声に思わずクッ、と短い笑いが零れる。彼女は何時でも楽しませてくれる。相手の指示を聞く聞かないは別問題だが
「オレがそんなのに従うとでも思うか?」
汚れたならまた買い直せば良いだろう、と僅かながらに笑みを浮かべつつドアを開け、そっとワイン色の絨毯を踏み締めた
トピック検索 |