名無しさん 2018-07-19 10:27:14 |
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……っ…!!
(縁側をパタパタと歩いていると不意に影が落ちる。視線を恐る恐る上げ、その影の主を見上げるとそこには鬼楼家の現当主の姿があった。身長差的にこちらが見上げる形になるが、それでも自分より骨格のしっかりした体型のせいかさらに大きく見え、その圧倒的存在と気迫に声をあげることもできない。喉の奥で何かが引っかかるような感覚に襲われ呼吸すらも意識していないとできない。相手の言葉に何か言わなければと回らない思考を回して口から出かかった言葉は相手の命令に怖気付いた。支度はほかのものにやらせろと言う、相手に断らなかったのは半ば自分の意思もあるから、と伝えようと思ったがやはり相手の前ではろくに口も回らない。このままではらちがあかないので「はい……」とだけ小さく返事をしては、相手の元へと近寄り縁側へと入っては、少々モジモジして、きちんと言うべきことは言わなければならないと自身に言い聞かせて小さく深呼吸しては)
……あの、ぉ、おはようございます。
(と、半ば声が震えたが婚礼の儀の後から相手は家の事で忙しくまともに顔を見合わせたのも、婚礼の儀以降食事をするのも、こうして会話をするのも初めてだ。だが、きちんと朝のあいさつはしなさいと両親より小さいころから言われてきた。それは、目の前の男にだって例外ではない。あいさつとともに小さく頭を下げては、再び相手の顔を見上げる。この世のものとは思えないほどの美貌は、すれ違う人々の心を鷲掴みにしてきたのだろう。だが、今自分に向けられているのは冷たい目。しかし、何故かその目から視線を逸らすことができない。瞳の奥で何かが揺らめくような、そんな不確かなものが見え隠れしているせいなのかもしれないが、それでも怖いと思う相手からこうして逃げるわけでもない自分の言動が不思議でならない)
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