お隣さんのいうことにゃ　

「　　朝起きてこの部屋にひとりって、なんか寂しいじゃん。＿＿...ねえ、だからさ。今日、泊まっていきなよ。朝まで俺と一緒に居て？　　」

　　２０５号室　の　里中さん　　２１歳

　元々は人里離れた田舎町出身。大学進学を機に上京し、家族と離れひとり暮らしを始めた。最初こそ自由で快適だと感じていた自分ひとりの生活だったが、今では話し相手のいない寂しさとひとりで朝を迎える孤独感に苛まれている。そのため暇さえあれば友人や知人を自宅に連れ込んだり、最近では夜な夜な出歩き明け方頃に帰宅するという不規則な生活を送っている。近所のおばさま達の噂話は強ち間違ってはいないが、寂しさゆえの愚行。決して悪い仲間と連んだり、危ないことをしている訳ではない。帰宅後は仮眠を取り、眠い目を擦りながら通学。そんな生活をしながらも、大学は無遅刻無欠席。大学卒業後は実家に戻り、安定した職に就けたらと考えている。田舎で悠々自適に育てられてきたマイペースなひとりっ子には、都会の忙しなさが耐えられない様子。
　ふわふわとしたシルエットで全体的に重めなマッシュヘア。美容師さんにお任せで染めてもらった髪色は青みが少なめのブルージュカラー。生え方の癖なのか襟足の伸びだけが早く、中央に集まりちょんと尖っている。瞳は黒よりのこげ茶色で、ぱっちりとした二重瞼が印象的な目元。僅かに目尻が垂れており、顔全体の雰囲気は比較的甘め。寝不足の影響からか時々隈ができていたりもするが、至って健康体。身長１７６ｃｍ。筋肉が付きにくい体質のため見た目は痩せ型、食べても中々太らず細身。私服は淡色を基調にしたものが多いが、特にこれといってこだわりがある訳ではない。足元はは決まって白のスニーカー。





「　　あ、あの。＿＿...やっぱり、いいです。な、何でもないです。本当に何でもないので。すみません、気にしないでください。　　」

　　３０１号室　の　神崎さん　　２６歳

　卑屈でマイナス思考な、ひきこもりの小説家。主に恋愛小説を中心に執筆しているが、恋愛経験は未だにない。当初は推理小説を書きたかった。しかし何冊書いても当たらず、自分に合ったジャンルを探そうと編集者さんの勧めで試しに執筆した恋愛小説が思わずヒット。とんとん拍子で映画化まで決まり、引くに引けなくなって今に至る。紆余曲折あったものの売り出してくれた編集者さんには恩義を感じており、小説に関わる殆ど全ての権限を一任している。実家は由緒正しいお家柄。初めて自らのやりたいことを両親に打ち明けようとしたのだが、話を聞くまでもなく全否定。その一件で、ネガティブな性格に拍車をかけることとなった。その後、高校を卒業し小説家になりたいと家を出てからは家族と疎遠状態。他人との関わり合いを極力避けながら、生活している。勿論、近所のおばさま達の訪問は居留守を使ってやり過ごしている。ここ数年、仕事関連以外で外出したのは片手で収まる程度。必要な物はネット注文で補っている。
　美容室のきらきらした雰囲気が苦手で予約の段階で何度も諦めており、結局はいつも自分で鏡を見ながら始末している。サイドの髪は肩に掛からない程度に揃え、見えない後ろ髪はなんとなくで整えている少し不恰好な髪型。目元を覆い隠してしまうほど伸びきった前髪だけは、一定の長さ以上切ろうとしない。自宅での執筆中は一纏めにゴムで結び、外出時は下ろしている。手を加えていない少し艶のある黒髪同様、切れ長で少し吊り上がった黒い瞳。紫外線を浴びる機会が極めて少ないため肌の色も白く、全体的にあっさりとした印象を与える容姿。身長１７０ｃｍと標準よりもやや小さく、筋肉量も少ないためひ弱さが際立っている。服装は全てネット通販で購入しており、地味な色合いのものばかり。





「　　あっ、そうだ。見ます？俺の彼女の写真。すっげえ可愛いんスよね、マジ天使です。本当天使。ほらこれ、この子が俺の可愛い可愛い彼女です。　　」

　　４０４号室　の　佐藤さん　　２４歳

　小中高と運動部に所属し、青春時代の全てを部活に捧げてきた。学生時代とにかく勉強が苦手だったため、高校卒業後は進学せず引っ越し屋さんに就職。これを機に、ひとり暮らしを開始。実家は歩いて３０分程度の比較的近い場所にある。数ヶ月前に友人の紹介で知り合った同じ歳の女の子と、最近お付き合いを始めた。傍から見れば決して可愛いとは言えない顔立ちの彼女だが、彼自身はとっても可愛い子だと溺愛している。他人と少しだけ美的感覚がズレた、所謂Ｂ専の部類。近所のおばさま達からの第一印象はとても爽やかな好青年。すれ違った際の挨拶や軽い雑談程度の関わり合いだと誤解されがちだが、実際は一言で例えるならば脳筋。頭で考えるよりも先に体が動く脳筋。少しだけ暑苦しい脳筋。そのうえ、語彙力が乏しく何度も同じ言葉を繰り返しがちな頭の弱い子。実家では２匹の犬を飼っており動物好き且つ、年の離れた弟がいたため子供の扱いに慣れている。
　サイドの髪はツーブロック、目立たないように後髪を上から少し被せている。短めに切られた前髪は流れにそって上にあげて固定し、朝のセットしやすさ重視の髪型。地毛自体は茶色よりの髪色だったが、彼女の好みに合わせて今現在は黒染め中。左右の耳にひとつずつピアス穴が空いているが、最近はあまり使っていない。身長１８２ｃｍ、がっしりとした体型。それなりに筋肉の付いた引き締まった体は、運動部時代の筋トレと日頃の作業による賜物。日に焼けた褐色肌も相俟って、男らしい雰囲気を纏っている。服装を選ぶ時に一番重要なポイントは動きやすさ。スポーツ系のブランドの洋服や靴を好んで着ている。





「　　なにが禁煙だよ、うるせえな。余計なお世話だっつうんだよ。＿＿...あ、おはようございます。今日はあいにくの天気ですね、雨が降らなきゃいいんですが。　　」

　　５０２号室　の　桐生さん　　２８歳

　現在、駅前の塾で塾講師として働いている。本命の就職先が決まるまでの間の腰掛け程度で始めた仕事だが、気が付けば早いもので６年目。なんとなく、ズルズルと現在まで続けている。保護者や生徒達の前では親身に相談にのってくれる優しい先生を演じており他講師陣からの信頼も厚いが、正直なところ他人の進路なんてどうでもいいと考えている。当人は私生活とのギャップに、ただただストレスが溜まる一方。仕事終わりの日課は、３駅先のコンビニまで煙草とお酒を調達しに行くこと。愛煙家且つ、酒豪。晩酌ついでに毎日部屋の掃除をし、朝のごみ出しは絶対に忘れない。休日は目覚まし時計を使わず目が覚めた時間に起床し、その後ダラダラと洗濯物をさばく。最低限の家具家電以外の物は置かず、男のひとり暮らしにしては片付けられている。冒頭の台詞に関して言葉遣いが荒いのは、昔々に少しやんちゃだった頃の名残。
　全体的に軽めの印象を与えるレイヤーカット。サイド、襟足共に気持ち長め。少しだけ薄く梳いた前髪は、邪魔にならないように右側に流している。暗めのアッシュカラーに映える白い肌、生まれつき色素が薄めの淡褐色の瞳。普段から黒い縁取りの遮光眼鏡を愛用している。身長１７４ｃｍ、骨格は細めだが至って標準体型。第一釦だけ開いた白いＹシャツの袖を少しだけ捲っている。肌寒い時の羽織ものは大体、深緑色のカーディガン。黒や濃いめのグレー、茶色のスラックスなどを合わせて穿いていることが多い。帰宅して直ぐに着ていた洋服を脱ぐ癖があり、万が一急な来客があってもいいよう手の届く範囲内に脱いだ服を畳んでおいている。





「　　君達は何度説明すればわかるんだ。資料作成すらもまともに出来ないんじゃあ、話にならない。仕事をナメてもらっては困る。もう一度、初めからやり直してくれ。　　」

　　６０３号室　の　佐々木さん　　４６歳

　仕事一筋で家庭を顧みなかったため奥さんに愛想を尽かされた、よくあるパターン。元々当時の上司による縁談の末の結婚なので、今回の一件で気落ちしている様子は特にない。寧ろ、以前よりも仕事に集中できると前向きに捉えている。が、炊事洗濯掃除などの家事全般はどうにもならず頭を抱えており家事代行を雇うべきか検討中。本来ならば健康面に気を遣った食事や掃除が行き届いた塵ひとつ残さない室内が理想だが、現状はどれも叶っていない。一度、自力で料理を作ろうと試みたがキャベツとレタスの違いを見分けることができず早々に断念した。近所のおばさま達の間でも会社の大半の後輩達の間でも、生真面目で融通の利かない堅物人間だと思われている。お酒が飲めないため会社の飲み会は殆ど欠席しているが、いつかのために克服しようとひとり自宅で特訓中。
　前髪から全ての髪を後方に流したオールバック、崩れ防止のためにしっかりとスプレーで固めている。身長は１８０ｃｍと比較的大きめ。いつもの癖で眉間に皺を寄せていることが多いためか、威圧的な印象を与える風貌。視力が悪く、日によってコンタクトと眼鏡を使い分けている。クリーニングから戻ってきた皺ひとつないスーツを何着も箪笥に並べており、お風呂から上がって眠る時以外は常にスーツ生活。占いを完全に信じている訳ではないが、朝の情報番組で目にするラッキーカラー通りのネクタイを締めている。足元には一番のこだわりをもっており気に入った靴は箱に入れて保管し、たまに出しては隅々まで綺麗に磨いている。





(　　旧知の間柄でも親族などの特別な関係設定の場合をのぞき、初めのうちは名字だけを明かしてお話を進めていきたいと思います。ただ、特に名前に強いこだわりがあるという訳ではないのでどうしてもという場合は仰ってください。　　)