赤の女王 2018-06-06 13:39:59 |
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>蜥蜴のビル
んふ。あたし今、とおっても気分が良いの。あれくらいじゃ怒ったりしないわ、男は少し乱暴なくらいが素敵な時だってあるわあ。(人から変わっていると評価を受けるのは実の所慣れっこであり、それに対してどんな反応をするかと言えばざっくばらんな話が気分次第。つまりは今この場において彼は幸運であったと言える。足取りこそ確りと彼の後へ続いていたが、声は依然ぽわんぽわんと浮ついてまるで半分夢でも見ているかのよう。赤の城へと続いてゆく彼との散歩道、出会い頭の顰め面から少しずつ笑顔を見せてくれるようになったその横顔を時折覗き込みながら会話に興じる。そして、言葉を発している最中も「んふ、」だとか「あは、」だとかただ意味も無く小さな笑い声が零れるのであった。そうこうしている内に辿り着いた赤の城は、文字通り、城と聞いて想像し得るイメージをそのままに形にしたような堂々たる佇まい。金持ちの男に口説かれる機会で言えば無い訳ではなかったが、目の前に広がる景色を見ればそれとこれとは段違いのものであることがよく分かった。「すごおい。」と、あまり豊かとは言えない語彙の中から搾り出した最も素直で端的な声を漏らしつつ、「あらあ、どうもありがと。ご心配には及ばないわ、良い女はねえ、ハイヒールで歩いても疲れないの。」と冗談交じりのウインクと共に彼の気遣いへ礼を述べ。通りすがりのメイドに指示を出してくれる彼の隣で、「ハアイ、御機嫌いかがあ?」とメイドへ向けてゆらりと手を振りつつ、「まあ。我侭言っちゃって良いのかしらあ。そうねえ、あたしが好きなのはミルクティーとアップルパイよお。」唇へ指を添える悩むような仕草の後、好みを尋ねる質問には素直に答えて)
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