赤の女王 2018-06-06 13:39:59 |
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>蜥蜴のビル
あらあ、なあにそれ生えてるの?素敵ねえ、素敵だわあ。(近付いてみて分かったこと、それは依然として消えない彼の不機嫌さの気配と背後でずるりと蠢く逞しい尻尾の存在であった。はた、と驚きに瞳をやや大きく開き、覗き込むようにして彼の後方へ目を遣ると通常人体には縁の無い筈の、きちんと鱗の並ぶ尻尾がそこにあった事にくふふっと楽しげに笑えば到底受け入れられそうもないおねだりと共に彼を見詰め。どうやら今は絶好調に薬が効いているらしく、どんな態度を取られようともめげない強かさを意図せず持ち合わせているようだった。煙草を咥える男性的なその仕草は好きだ。うっとりとして彼の姿を眺めつつ、「そんなに怖い顔しないでちょうだいねえ。あたし何にもしないわよ、そう、なあんにもね。ちょっと柔らかくって良い匂いがして、あなたの煙草の邪魔しないってくらいかしらあ。」そんな言葉と共に微笑んで、空へと昇ってゆく白い煙の揺らめきへと視線を移し。すん、と煙草の匂いを今一度確かめ、何処かで誰かに一口欲しいと興味本位で強請ったのはいつの事だったかとぼんやり思考を巡らせる。その片手間に聞くような重要度ではない、もっと真剣に耳を傾けるべき内容が今まさに彼の口から告げられているというのに、薬の効果もあいまってぼやぼやと安定しない思考回路では随分と簡単に処理されてしまったようで「まるでお伽噺ねえ。あと15年前だったらきっと飛び跳ねて喜んでたけど、大人になるって残酷よお。」と退屈そうだった。己の置かれた状況をよそに、今は彼との新鮮な出会いにふわふわと上昇気流に乗った機嫌のまま「何だかよく分からないけど、人生なんてそんなものよねえ。ビルに会えたからそれで良しってことにするわあ。面倒事に巻き込まれた可哀想なアリスを助けてくれるんでしょ?」そう言って彼の仕草を真似るように、ちろりと舌の先を出してみせ)
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