赤の女王 2018-06-06 13:39:59 |
通報 |
>帽子屋
(甘い気持ちと苦い気持ちがあるような恋心を彼に抱いているわけではないという自覚はしている。それこそ、彼ではあるが姉を持ったような気持ちに近いと言っていいだろう。だからこそ、彼に贈った頬への口付けにはお礼やら此れからもよろしくという意味が込められている。もし、それ以上の気持ちを抱いていたのなら此処まで仲良くなることは出来なかっただろうとさえ思う。自分の恋する姿は隔離される程異常なのだから。向けられる温かくて優しい彼の笑顔を失わない為には、甘くて苦くて、だけれど魅了されずにはいられない恋心というものは抱いてはいけないのだと改めて実感する。抱かないと断言は出来ずとも、今は彼とそういう関係になりたいと思わないのだから十分だろう。ふふ、と小さな笑い声を漏らすことで会話の終わりを示し。無一文であるということを真剣に気にしていたから、高らかな笑い声に驚いてしまう。きょとんという言葉が似合うような表情を浮かべていたものの、まるで交渉のような言葉を聞いて、少しの間を置くことで意味を理解した。茶目っ気混じりの仕草で、真剣に悩んでいたことが馬鹿らしいと思えるようになれば表情を緩め「わかった。じゃあ、荷物持ちは任しとき。代わりに買うてもろうんや、全うしてみせるよ」繋いでいない方の手を上げぐ、と肘を曲げれば細い二の腕に力こぶがあるかのような素振りでキラリと瞳を輝かせ言い切って。視線を送っていたという自覚がなかったので、見ていたものがバレたという気持ちになり少々恥ずかしい。スタッフの女性の言葉に素直に甘える彼の手からパンプキンの形をしたマシュマロを受け取ればぱあっとわかりやすいくらいに表情を明るくさせ「かぼちゃのくりーむ。美味そうやわァ、食べていいんよね?」マシュマロは全て同じ味というイメージだったので中にクリームが入っているだけでも驚きだ。親指と人差し指で挟んで店の灯りに照らすように様々な角度から眺めるとパクッと一口で頬張って。口いっぱいに広がる甘さだけでなく噛んだことでとろりと流れ出るカボチャ特有の甘さ。初めて食べるマシュマロの味にほんの一瞬固まってしまう。すぐに我に返れば彼を見上げ「凄いわァ!めちゃめちゃ美味しい!マシュマロの甘さだけやなくて、カボチャの味もして…一度で二度楽しめる…みたいな感じやわァ。こんなの食べたことない!」食べたマシュマロの味を共有したくて、少しでも彼に伝えたくて片手をぶんぶんと回したり握り拳を開いたり閉じたりを繰り返すことで表現し言の葉を並べていけばキラキラとした眼差しを向け「帽子屋さんはいつもこういうの食べてはるん?羨ましいわァ」彼が此処の常連なのかはわからないがきっと食べたことがないということはないのだろう。大袈裟に肩を竦めることで羨ましいという気持ちを表現するものの笑顔がそのままなことから本気でそう思っているというよりは冗談交じりに伝えているようで)このマシュマロ欲しいわァ。
トピック検索 |