赤の女王 2018-06-06 13:39:59 |
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>鼎
(指摘を受けるまでその違いが頭に浮かばなかった迄にはこの部屋を訪れるアリスは居ないらしい。雰囲気の違いと明確な言葉で表された事で少し遅れて察すると「態々小言を受けに来るほど奇特なアリスも居るまい、もう休むだけと恥じる姿だ。この事は伏せてくれ」食事も入浴も終えてしまえば後は持ち帰り分の仕事をこなし読み掛けの本を読んで眠りに着くだけの時間といったこの時を狙って、口煩く融通の利かなさに定評がある己の場所に顔を出すアリスの物珍しいこと。だからこそ彼女が訪れたことに驚きは隠せず、雰囲気の違いを他者に見せるべきものでは無いと羞恥と捉えて前述を。受けたのが労りの言葉だけだったならばきっと二度三度の言葉のやり取りにて彼女を自室に戻していただろう。そんな想定が頭から抜けたのはご褒美と称した手土産の存在で。何処かへ出向いたその先でまで、自分の事を思い出したという些細な事実が不覚にも嬉しさとして心に刺さり「……本を読むより有意義な時間になりそうだ。話を聞こう、」差し出されるお土産と、ただの差し入れとしてであれば受け取ることが出来なかったかもしれない自分の背を押す彼女の機転の利いた言葉選びに沈黙の後、ふ。とほんの少しの吐息を落とす小さな笑みを零して「有難く頂く」と差し出されるそれを受け取り、彼女を招くように「椅子を使うといい、…その前にこれを」扉を支えていた腕を手放せば椅子を引いて誘導し、座らせる前に手にしたのはクローゼットに丁寧に仕舞われたグレーのカーディガン。自分用のそれは彼女が羽織れば先の注意に至った足を隠すことが出来る大きさで)
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