赤の女王 2018-06-06 13:39:59 |
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>帽子屋
(彼と出会ってから驚きっぱなし。こんなに気遣ってくれる人は初めてで。そんな事を考えながら、歩みに関して「はーい」とたった一言返事を返しつつも、隣を並んで歩くのも、一歩後ろを歩くのも楽しい。だからそのままの歩みを続けてほしくて文句も注文をすることも無く。もちろん、彼が興味があるかどうかも知りたかったが、彼の口から新たな住人の名前が出てくれば「ぐりふぉん、りとるおいすたー」覚えるように、というよりは不思議な名前を言いたいという気持ちから小さな声で復唱し。得意じゃないなら此方から提案すべきじゃないなと思い直すと改めてポケットへとサイコロを入れる。裁縫が好きということは今着ている服も手作りなのだろうかと眺めるような視線を向けてしまう。どのくらいの間、同じ服を着ていたかわからない身としてはキラキラ輝いて見えるから不思議だ。「家事、したことないんよ。してみたいわァ」綺麗じゃないとの言葉に綺麗にする!という宣言が出来ないのが残念だが、やってみたいという好奇心の方が勝りひょこっと下から顔を覗き込ませて提案し。庭園を抜けたことで空気が変わったと感じ取れば思わず深呼吸をしてしまう。ただでさえ外に出れて嬉しいと思っていたのだ。空気がこんなに美味しいものだと思わなかった。彼の言うお菓子や紅茶を食べたり飲んだりしてみたい。彼の言う綺麗な物を身に付けてみたい。自然とそんなふうに思ったところで、自分に対する問いへと変われば悩むように首を傾げてしまう。「うーん……あ。多分やけど、甘いものが好き。気のせいやったらごめんやけど、帽子屋さんから甘い香りがする。この香りが好きやなァって思ったから、甘いものが好き。味のしない食べ物は嫌い。時間がわかんないのが嫌い。真っ白な部屋が……怖い」ふと気付いたように彼の肩ら辺へと顔を近付けたかと思えばクンクンと鼻先を動かす。改めて顔を上げては気付くことができた、と言いたげな表情でゆっくりと言の葉を紡いでいくと次第に隔離されていたときのことを思い出してか表情を曇らせて。手を伸ばし緩く彼の袖を掴み「好きなモノが、あまりわからないんよ。でも、これから知っていきたい……いけるんやろか?」恐らく一番最初に感じるべき不安が今更込み上げてきたのか。否、外の世界が久々だからだ。そう思わなければやっていけない、そう考えながら首を傾げて)
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