赤の女王 2018-06-06 13:39:59 |
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>グリフォンさま
(とても狭い世界で生きてきた。ある時は六畳の長屋で、ある時は江戸の華と操られ、ある時は光届かぬ座敷牢で。常に無力と共に歩んできたお陰で、己の情けなさにはある程度折り合いをつけているつもりだった。しかしあまりに広く美しく、"自由"であることを求められるこの国ではどうだろうか。見知らぬ土地で顔面蒼白に杖をつき、傷んだ片足を一張羅と共に引き摺り、案内人の背を負うことしか出来ない。珍しく鬱々とした心の闇に支配されそうになった瞬間、ぴりつく痛みを膝に感じてはっと我に返る。泳ぐ双眸でようやく捉えたのは眩いばかりの彼の笑みで、その瞬間何故だかはらりと涙が一筋零れた。縋るように握り締めていた数々の羽根は、力を失った手からハラハラと地へ舞い落ちて「____ひなとは、怖かったとです」かすかな声音でも静謐の森にはよく響く。口にして初めて、無意識のうちに考えぬようにしていた心細さや諸々の恐怖を自覚する。こんな風に本音を吐けたのは、遠慮するなという彼の申し出があったからか、それとも稀に見せる笑顔に感極まったか。脛に優しい衝撃を感じては、口角を上げて"ふふ"と吐息だけで笑い、頬の動きに連動してもう一粒雫が零れたけれど、それ以上は追随することなく「…はい!グリフォンさま、おぉきに」元気づけようとしてくれている彼の表情につられるように、しゃんと背筋を伸ばして目一杯の返事。手当をしてくれたことだけではなくて、全ての事に感謝を告げると同時にぺこりとお辞儀を。ムカデ、そんな風に聞こえた名ではよもや人の姿は想像できず、今度森の地面を這ってでも探し回ってみようと密かに決意を。ひそやかな声は大事な秘密を特別に共有してくれた事を想起させ、富士の湖なんかよりずっと澄んだ幻想的な景色に"はゎぁ…"と感嘆句を零した後「グリフォンさまはずるい。そないな言い方されたら、ひなとは自惚れてしまいますよ」特別、という言葉に隠しきれない感激を喜色として満面に押し出し、にまにまと締まりのない笑みで本日二度目の不思議なハンドサインを一瞥し「はい、お邪魔でなければいつでもお供させてくだせぇ」と同じく中指を立てて見せる。親愛か何かの印だと勘違いをしているらしく、ほんわかした笑みとはあまりにアンマッチで。やがて到着した地点、初めて見る意匠の家に零れんばかりに目を瞠り「わ、わ、豪邸やぁ…!」あんぐり口を開け、高揚に頬を染めながら、すぐにでも玄関に駆け寄りたい気持ちを堪え。そうしてきょろきょろ家の周囲を見回し「そいで、納屋はどちらに?」よもや自分のような浅ましい身分の者が彼のような現人神と同じ母屋に居住できるなんて分不相応な考えは端から思考の範疇外で、温もりに溢れた立派なお屋敷に付属する小屋を探してはのろのろと足を進めて)
(/主様、今晩わ。厚かましい事を重々承知の上で一つお願いがあります。イラストの件ですが、やはり髪型に少々手を加えて頂く事は可能でしょうか。M字前髪とは前髪の生え際がやんわりM字ということで、額は見えている状態が理想です。サイドもいわゆる姫カットのような形で、唇より少々短い程度の長さがイメージに近いです。お忙しいところ大変恐縮ですが、御手隙の際に修正頂けますと幸甚です。ご検討宜しくお願い致します。)
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