赤の女王 2018-06-06 13:39:59 |
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>グリフォンさま
わ、ぅ。行き成りどないしはったんですかあ。
(大きな手が頭上から迫り来る。褒め労うための触れ合いより、獣欲を満たす為の一方的な支配へ端を発する行為に慣れていたがゆえ、襲ってくるであろう痛みや衝撃に耐えようと逃げるでもなくぎゅっと目を瞑り身体を強張らせ。だが多少乱雑な手付きから髪を通して伝わってくるのは、手前勝手な欲望ではなく確かな暖かさ。それが少なくとも害意を孕んでいないと判断すれば驚きから間抜けた声を漏らし、様子を伺うようにそうっと開いた双眸を一度だけ泳がせ恍けるように破顔して「グリフォンさまの御手々、すぅごく心地好ぇです」あの頃と比べてぽつり零し。敬称の有無に関しては「んなあ、とんでもねぇです」と羽根を片手に握ったまま顔の前でわたわたと両手を振って「グリフォンさまは、ひなとの恩人様ですぇ。呼び捨てなんてしよったら罰当たるっ」これだけは譲れませんと、困ったように短い眉尻を下げつつ引く気は無いと雄弁に語る朱色に懇願の光を浮かべて再度ぺこりと頭を下げ。「んだけど、そん三つは守れるように気ぃつけます」代替案とばかりに三本の指を脳裏へ刻み付けるようにしっかりと見つめ力強く頷き。この世界のルールという大層な要求ではなく彼個人の望みであればこそ、それを遂行しようと意気込んで。次ぐ説明をまたの機会へ保留して貰えれば気の抜けた息を吐き「ああ、えかった。これ以上は覚えられんところやった」くしゃくしゃに乱された髪を直すどころか喜々として受け入れ、えへへと締まりなく口角をふにゃけさせながら長い髪の先を指で弄び、彼の不機嫌な面相が少し和らいだことが嬉しくて「ひなとのほうこそ、お世話んなります。よろしゅうお願ぇいたします。こんなお綺麗ぇで親切な御方の傍に居さしてもろて、ひなとはえっらい幸せもんやあ」馬の尻尾を揺らしながら、心からの喜びに何度も小刻みに首を垂れて。理由こそ未だ分からないが、結果あの地獄から抜け出せたことと、何より親切な案内人に出会えたこと。自分なんかがこんなに美しい彼の元へ居候させてもらえるのだから、これはきっと人生で二度あるかないかの僥倖だろう。気付けば多幸感のあまりじんわりと涙が膜を張り、紫の化粧をかすかに濡らして「どないしたら、こん幸せをグリフォンさまにお返しできますやろか」誰に問うでもなく、声に乗せた自覚もなく、心の底にある想いをぼろりと吐露し。しみったれた感傷は、身体がやにわに宙へ浮く慣れない感覚に吹き飛ばされて。脂肪に乏しい細い体躯は驚くほど軽く、けれど打掛の質量が重量感を嵩増して、忠告への了解を口にするよりも早く膨大な風を全身の肌に感じて急上昇してゆく。未知極まった現状に脳の処理は追い付がす目を白黒させて「ひわぁぁ、」と情けなく高い声を上げ生物的な恐怖からぎゅうと彼の薄い服を羽根と共に握り締め。その刹那、急上昇による突風に耐えられなかったのか懐にしまい込んでいた大切な白檀の扇子がほろりと零れ落ち、虚空へ真っ逆さま。命より大事な母の形見を追うように「かかさま…!」と血相を変え、動くなという忠告も忘れてぐにゃんと身を捩り、下へ広がる幻想的な景色を楽しむことも一旦放棄して外界へ身体を投げ出すように両手を伸ばし)
(/お声掛け有難う御座います。 愚息のイラスト確認させて頂きました。イメージよりずっと美しく描いて頂いて嬉しいやら恥ずかしいやらです。本当に素敵なイラストを有難う御座います!此方こそ、 冗長な文章になっており申し訳御座いません。 主様の素敵な文へなるだけ釣り合う様に精進致しますので、何卒今後とも宜しくお願い致します。/深礼)
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