赤の女王 2018-06-06 13:39:59 |
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>ジョーカー
……そうか。( 語られる実情は哀しいものであったが、柔らかな語り口のおかげで幾分心に受け入れやすい。安っぽい同情の言葉を紡ぐ気にはなれず、短く相槌を返すと重ねた手にやんわりと力を込めて。語られる制度は色鮮やかな景色の中で自由を謳うわりにはシビアらしい。しかし、それすらも”運命”と括られてしまえばどこか可笑しくて、次いで頬に触れる唇の柔らかさに目を細める。「看守が勤務中にへべれけになることが許される世界なら、だいぶ気楽にやれそうだな」相手の言う通り、正に不思議としか言いようのない事が立て続けに起きているが、飄々としたこの男の存在と言葉が、緩やかに不安や緊張と言った感情を紐解いていく。辿り着いた城は遠目から見ていた時も大きいとは思っていたが、いざ目前にすると桁違いの迫力だ。外出着とは言えラフな格好の自身があまりに場違いのように思えたが、歩いている途中に聞いた城の地下へ行けば会えるという言葉が気持ちを楽にさせた。「女王への挨拶までするのか。気が張るな」口では言いつつもどこかぼんやりと、何とかなるだろうと構えられるのは口移しで飲まされた僅かなアルコールのおかげか。それとも、変わらず腰へ回されたままの手の温もりのおかげか。「最初に現れた時はどんな奴かと思ったけど、色々と教えてもらって助かった」と、歩みは止めないままに相手の横顔を見つめて礼を述べ )
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